世界で一番恋してる

□14日
1ページ/1ページ





1月14日



午後九時



「皆ありがとー!!」
「最高だったぜレディたち!」
「またなー!!」
「楽しかったですよー!」
「来てくれて感謝する」
「また、会いましょう」

客席に手を振りながらステージから順番にはける音 也、レン、翔、ナツキ、真斗、トキヤ

たった今ST☆RISHのライブが終わった



そして楽屋



「みなさん、お疲れ様です!」
「サンキューナナミ!」
「いやー!!大阪初日!大成功だったね!」

音也がタオルで額の汗を拭いながら言う

「そうですね!本当に楽しかったです!」
「今日のレディたちもみんな可愛かったな」
「神宮寺、貴様はいつもそればかりだな」

各々がソファに座ったり水分を補給したりと休息を 取る そんな中

「一之瀬さん、どこ行くんですか?」

楽屋から一人出ていこうとするトキヤ

「少し、電話を・・・」
「電話?誰とだよイッチー?」
「それは・・・すぐに戻りますから」

それだけ言い残し、携帯を片手に楽屋を出て行った

「トキヤ、最近変だよねリハーサルも上の空だし」
「そうですね、大阪に来てからでしょうか、甘いものが足りてないのでわ?」
「お前と一緒にすんなっつーの!だいたい、今日のライブも歌詞間違えてたよな」
「仕事には真剣な一之瀬が、確かにおかしいな」
「疲れているんでしょうか?」
「なにか、ありそうだな」

神宮寺の言葉に皆はトキヤが出て行った楽屋のドア をジッと見つめた





一方その頃

「彼方が歌番組とか、珍しいな」
『他に見たいのあんのか?』
「いや、別にあれへんけど」

コタツに入ってみかんを食べながらテレビを見ている彼方と白石
どうやら、歌番組を見ているようだ

「このアイドルグループ、今めっちゃ人気やな」
『知ってんのか?』
「そら当たり前やろ!めちゃくちゃ有名やない か!」

ちょうど今画面の中でST☆RISHが歌っている

『ふーん。・・・このグループのライブにタダで行 けるって言われたら、行きたいか?』
「そら、タダなら行きたい。けど、チケットの倍率無茶苦茶高いらしいで?」
『(そうなのか・・・)じゃあ行くか』
「・・・・・・?」
『だから、ライブ』
「話が見えん」

彼方の唐突すぎる提案に頭がついていかない白石

『チケットあるんだけど、行く奴いないから』
「・・・・なんでチケット持ってんねん。今俺、倍率高い言うたばっかりやねんけど?」
『もらった』
「誰に?」
『それは・・・ないしょ』
「昨日出かけてた相手か」

誰にもらったのか言わない彼方に、ピンと来たようだ

『・・・・行くのか?行かないのか?』
「行く」
『じゃあ明日、16時に家出るから、準備しとけよ』
「明日!?また急やな!」
『なにか、予定あるのか?』
「・・・ないけど」
『暇人』
「喧嘩売ってんのか!」

みかんを一房口に放り込んで鼻で笑いながら言う彼方に、立ち上がる白石
ちょうどその時、彼方の携帯が鳴った

「電話、なってんで」
『・・・ああそうだな』
「?そうだな、て。でえへんのか?」
『・・・ちょっと外出る』
「なんでや、ここでええやん」
『・・・ま、いいか』
「???」

携帯のディスプレイに表示された名前を見て一瞬ためらう彼方

『もしもし?』
【あ、彼方さん。今いいですか】
『はあ』
【良かった。今、ライブが終わったところなんです】
『そうなんだ、お疲れ様』
【ありがとうございます】
『・・・・え?で?』
【あ、すみません・・・特に用事があったわけでは ないんですが・・・】
『あ、そうなん、、、だ』
【彼方さんの声がどうしても聞きたくて・・・】
『え、あ・・・そう、ですか』

電話の相手はトキヤだった
特に内容も無い電話に自然とぎこちなくなる彼方

「なんでそないぎこちないねん(相手誰なんやろか)」

そんな彼方にボソッと突っ込む白石

テレビを見つつも、彼方の電話の内容に聞き耳を立てる

電話の相手がすごく気になるようだ

【今、なにしてるんですか?】
『今?家でテレビ見てる』
【どんな番組ですか?】
『歌番組だよ、ちょうど今テレビの中でトキヤが 喋ってる・・・ははっ、なんか変な感じ』
【(可愛い・・)私の出ている番組、見てくれているんですね、嬉しいです!】

テレビの中にいる相手と電話しているというおかしな状況に、吹き出す彼方

「(彼方が楽しそうに喋りよる・・・)なんや、自分トキヤ押しなん?俺は断然音也やな」
『音也?つーか電話中なんだから話かけるなよ』

完全に彼方の電話に割り込む白石

【音也・・・(がどうしたんでしょう??)彼方さん?】
『あ、ごめん、なんでもない』
【・・・もしかして、側に誰かいるんですか?】

電話の向こうから聞こえてくる会話に隣に誰かいるのだと気づいたトキヤ

『あー、この前言ってた、一緒に住んでる奴』
【・・・・・そうでしたか。すみません、邪魔してしまいたね」
『いいよ、特に何かしてたわけじゃないし、こんなやつの事気にしなくても』
「こんなやつって俺の事か?」
『他に誰がいるんだよ?てか、話かけるなって』
「しゃあないやん、相手誰かめちゃめちゃ気になんねんもん!」
『なんでだよ、気にすんな。つーか近いんだけど!』

そう言いながら、彼方の携帯に耳を寄せてくる白石
そんな白石を片手で抑える彼方

「やって寂しいねんもん、構ってくれや」
『はあ?何言ってんだお前』
「・・・俺とその電話の相手、どっちが大事なん!!」

相手にされない白石は頬を膨らませ真剣な声色でそう聞いた
もちろん本気ではないが

『・・・(こんな時にボケるなよ・・・めんどくせえ)』
「彼方」

電話の相手に聞こえるような声量で名前を呼ぶ白石

【彼方さん(一体二人はどういう関係なのでしょう、もしかして、観覧車の時の電話も・・・・)】
『!ああ、悪いっ(忘れてた)なんでもない、なんでもないから、気にすんな』
「つまらんやっちゃなあ」

全然ノッてこない彼方に素に戻る白石

【・・・・あの、彼方さん。私の名前、呼んでくれませんか?】
『え?なんで急に・・・』
【呼んで、欲しいから・・・】
『・・・(名前なんて呼んだら電話の相手がトキヤ だってバレる・・・)』
【ダメですか・・・でしたら今からそちらに伺ってもよろしいでしょうか?】
『!そ、それはダメ!(蔵之介もいるし無理だろ!)』
【・・・では、名前、呼んでください】
『・・・・っ』
「・・・・・」

携帯片手に戸惑う彼方を怪訝な表情で見る白石

『と、トキヤ・・・』

そんな白石をチラリと横目で見つつ、ぼそっと名前を呼んだ

【よく聞こえませんでした、もう一度お願いします】
『・・・トキヤッ(もうバレてもいい!どうせ明日バレるかもしれないし!)』

どうやら開き直った様子

「(トキヤ?)」
【ありがとうございます。これで明日のライブも頑張れます!本当は直接会って聞きたかったのです が・・・】
『あ、明日会うんだし今日は・・』
【そうですね、我慢します。それに、我慢すればするほど、あとから得られる喜びも大きいですから ね】
『喜びって・・』
【明日、必ず来てくださいね、楽しみにしてます】
『ああ、俺も楽しみにしてるよ』
【彼方さんの声が聞けてよかったです、では、おやすみなさい】
『おやすみ』

そう言って彼方は携帯の電源を切った

『はあ(なんだったんだろ)』
「なあ」
『・・・なに』
「トキヤて、あのトキヤ?」
『・・・・・・』

白石の問いかけに目をそらす彼方

「もしかして、この前の水族館も、そいつと行ってきたん?」
『・・・・・・』
「無言は肯定ととるで」
『・・・そうだよ』

真剣な白石の視線に観念したように一言つぶやく彼方

「・・・・ほ、ほんまかいな・・・つかどこで知り合ってん!つか、なんで電話番号知ってんねん!つか、なんでそんな仲イイ感じなん!?」
『つかつか、うるさい』

机に身を乗り出して彼方に迫る白石

「まじでどないなってんねん!」
『いや。俺にもよくわかんないんだよな・・・』

その後、興奮を抑えられない様子の白石に、彼方は 今日までの経緯を説明した




その頃電話を切ったトキヤは



「・・・・彼方さん。(少なくとも隣にいた彼の方は彼方さんのこと・・・)」

ジッと携帯を見つめて名前を呟いた
そんなトキヤの背後から

「どうしたんだよトキヤー、元気なさそうじゃん。 そんな状態で明日のライブ大丈夫?」
「音也・・・」

音也が声をかけた

「なんか悩みがあるなら俺聞くよ!」
「・・・・いえ、なんでもありません・・・」
「トキヤ・・・」
「明日が、勝負です」
「??」

トキヤの肩を叩いて言う音也だが、当のトキヤはゆるりと音也の手をどかし自分の楽屋へと戻っていった

「明日は大阪ラストだし、元気になってくれるといいなあ・・・」
















「ほな、そのライブのチケットも本人から・・・」
『ああ』
「!?マジかいな!?なんで俺にも紹介してくれへ んねん!!」
『どうせ言っても信じなかっただろ』
「うっ・・・いや、俺、彼方の言うことやったら信 じるで!」
『嘘くさ』
「嘘ちゃうよ!やって俺、お前のこと・・・」
『・・・・蔵』
「めんどくさいからやっぱやめとく」
『なんだよ・・・乗るべきか迷うから、それもうや めろよ、めんどくさい』
「明日のライブ楽しみやな!」
『・・・そうだな(やめる気はなさそうだな)』





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ