世界で一番恋してる

□16日
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『んじゃ、行ってくる』
「どこ行くねん」
『・・・さあ?』
「さあってお前なあ!」
『仕方ないだろ、トキヤ教えてくれないんだもん』
「だもんて、大丈夫なんか」




1月16日




昼ご飯を食べて、着替えもすませ、玄関前の前身鏡で最終チェックをする

『大丈夫かって、お前はいったい何をそんなに心配してんだよ』
「なにって・・・週刊誌とか?(何をって言われると・・・)」
『・・・男同士なんだし大丈夫だろ』
「そないなこというて、この前のやつ、雑誌にのってたやないか」
『顔はうつってない』
「まあ、な・・・」

なんか知らないが物凄く突っかかってくる蔵ノ介
水族館のこと、隠していたのを、根に持ってるっぽい

『心配することないって』
「・・・どないなっても知らんで俺」
『ああ。お前には迷惑かけねえよ』
「あっそ。つか、キメすぎちゃう??」
『・・・そうか?』
「勘違いされんで」
『は?』

Vネックのセーターに、普通の黒のパンツ
上にはジャケット

普通じゃね?
勘違いって、何をだよ

「いつ帰ってくんねん??」
『急遽今日の夕方の新幹線で東京帰るらしいから、それまでには解散だろ?』
「4時間くらいか・・・」
『たぶん?なんか用事あんのか?』
「いや、別にないけど」
『??』

こたつに入ったまま、俺に背を向けて言う蔵ノ介
なんか不貞腐れてる?

最近蔵ノ介の様子がおかしい
ライブに行ってから、何かと機嫌が悪い気がする

内緒にしてたことまだ怒ってんのか?
それとも、音也に会えなかったこと引きずってんのか?

『じゃあ、行ってくる』
「気ぃつけてなー」

俺のほうは一切見ずに見送る蔵ノ介
なんなんだよ、気分悪いな

『さてと、場所どこだったかな』

家を出てトキヤからのメールを開く

『ホテルか・・・』

蔵ノ介には、行先は決まってないといったけど
ほんとはもう決まっている

トキヤに内緒にしてくれって言われたから、言わなかっただけだ

道でタクシーを拾い、行先を告げる

前回の水族館の一件で、外で会うのは難しいらしい
だからって、一般人の俺を宿泊先のホテルに入れるのはどうかと思うけど

『そこまでして俺なんかにあいたかねえ』
「お客さん、もしかして芸能人なん?」
『え?』
「あのホテル、芸能人が泊まるで有名なんやで!しかもお兄さんどえらいイケメンやしなあ!ジャニーズか!ん!?」

うわー、ぐいぐいくるな・・・

『違います』

こういうのはあんまり相手しないほうがいいんだよな

それから目的地につくまで、運転手は一人で喋っていた

「まいどー!」

代金を渡して、タクシーを降りる

『はあ、なんか疲れた』

移動だけなのに、なんでこんな・・・

『ついたら電話してくれって言ってたな』

言われた通り入り口の前でトキヤの携帯に電話をかける

『あ、もしもし。トキヤ?』
【はい。つきました?】
『ああ、今入り口の前』
【わざわざ来ていただいてすみません・・・そのまま受付まで行ってもらえますか】
『わかった』

自動ドアをくぐって受付に向かう

「いらっしゃいませ。お泊りでしょうか?失礼ですが、ご予約のほうは・・・」
『あ、いや、えっと・・・』
【受付の方と、電話かわってもらえますか?】
『ん、わかった。あの、すみません電話代わってもらえますか?』
「かしこまりました」

自分の携帯を受付の人に手渡す

それにしても、すごいホテルだ
フロントめちゃくちゃきれいだし広い
芸能人はこういうところに泊まるのか
やっぱり高いんだろうな

電話を渡して手持無沙汰な俺はきょろきょろとホテル内を見渡した

「お待たせいたしました。お電話お返しいたします。確認取れましたのでルームキーを、お渡ししますね。こちら、801号室です」
『あ、ありがとうございます』
「ごゆっくりどうぞ」

お姉さんから鍵を受け取りエレベーターに乗り込む

「何階でしょうか?」
『8階で』
「かしこまりました」

うわー。エレベーターガールとかいるんだ
一度でいいからこんなホテル泊まってみたい
凡人には無理だな

「お待たせいたしました。8階です」
『どうも』
「ごゆっくりどうぞ」

エレベーターガールに軽く会釈し、部屋を探す








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