世界で一番恋してる

□16日
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『801、ここか』

部屋の番号をしっかりと確認して、ドアをノックする
間違ってたら大変だからな

「彼方さん、お待ちしていました。わざわざすみません」
『ん、いや大丈夫』
「どうぞ」
『お邪魔します』

トキヤに促され室内に入る
着ていたコート脱ぎ、手渡されたハンガーにかける

「何か飲みますか?」
『あ、じゃあ、コーヒー』
「はい。そこ、座っててください」
『ん』

言われた通り、指さされた先のソファに腰を掛ける

広い
さすが、部屋も最高級って感じだ

見たこともない大きさのベッドに
いかにも高そうな装飾の机と椅子
今座っているソファだって、座り心地最高だ

「お待たせしました」
『ありがとう』

コーヒーカップを受け取って一口いただく

あち
思ってたより熱い

あー、火傷したかも

「熱かったですか?」
『ん、いや、大丈夫』
「・・・」
『・・・ところで、話って・・・?』

向かいのソファに座って口元を抑えているトキヤ
なんか言い辛いことなのか

前日のメールで話したいことがあるから来てほしいといわれて、今日ここに来たわけだけど
時間大丈夫なのか??
ちらっと部屋の時計に目をやる
時間はすでに2時を過ぎていた

「昨日はすみません、せっかく楽屋まで来ていただいたのに、会えなくて・・・」
『ああ、なんか大事な話してたんだろ?神宮寺さんに聞いた』
「レン・・・ほかに何か言ってましたか?」
『??いや、特に』
「そうですか、よかった」
『?あ、ライブすごい良かった、チケットありがとう』
「楽しんでいただけましたか?」
『ああ、かなり!』
「それはよかったです」

にこっと笑って言うトキヤ
ああ、やっぱかっこいいなあ

柔らかい笑顔が様になってる


それからしばらくライブの話で盛り上がり

『でも、あれは、ちょっと、ビックリした・・・』
「あれ?」
『ほら、トキヤのソロの、最後のやつ。さすがにサービスし過ぎ』
「ああ、キス、ですか」
『っ、ストレートに言われると、恥ずかしいな』

じっと見つめながらキスって言われると、相手が男でもさすがに恥ずかしい
思わずトキヤから視線を外した

「彼方さん」
『んん?』

照れ隠しにもう一口冷めたコーヒーを飲んだ

「そっちに座ってもいいですか?」
『・・・いいけどっ、』

こんなに広いのに勿体ない
と言おうとしたのだが、もう移動を始めていたので言えなかった

至近距離に腰を下ろすトキヤ

いい匂いする

「彼方さん、いい香りがしますね」
『え?いや、トキヤのほうこそ』

距離が近すぎてトキヤのほう向けない

「・・・彼方さん」
『!?なっ、』

俺の髪を一束手に取り顔を近づける

トキヤには悪いと思ったが、反射的に距離をとってしまった

「っ、すみません」
『い、いや、びっくりした・・・』
「ん・・・」
『・・・・』

なんともさみしそうなトキヤの顔
やめてくれ
俺が悪いみたいじゃないか

そして沈黙に耐えられない

『っ、トキヤも神宮寺さんも、アイドルってみんなこんなにスキンシップ激しいもんなのか・・・』
「レン?レンにもされたんですか?」
『ん、ああ、今みたいに、髪にチュッて』
「(チュッて・・かわいい)そう、ですか・・・」
『一般人はさ、こういうの慣れてないんだからさ、あんまりしないほうがいいよ』
「こういうことされたの初めてですか?」
『当たり前だろ』
「・・・これも、初めてでしたか?」
『っ!?おい!』

手を取られ、ライブの時のように手の甲にキスをされる

だから、今するなって言ったばっかだろ!

「照れてるんですか?可愛いですね」
『っ・・・こんなイケメンにそんなことされたら誰だって照れるだろ』

心臓がバクバクする
いくらアイドルで顔がいいからって、なに男相手にときめいてんだ俺!

「私のこと、素敵だと思いますか?」
『え?まあ』
「・・・はっきりいっていいんですよ」
『素敵、だと思うよ』
「どんなところが」
『どんな・・・』

って言われても

顔?話し方?
性格・・・はまだよくわからないし

「好きか嫌いかと、聞かれたら・・・」
『え・・・っと』

嫌い。なんて
本人の前で言えるわけないだろ
いや、別に嫌いなわけじゃないけど

「はあ、私は何を言って・・・すみません、忘れてください」
『・・・・ん』
「今日は渡したいものがあってお呼びしたんです」
『渡したいもの?』
「はい」

そう言ってトキヤはソファから立ち上がった







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