世界で一番恋してる

□22日
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二人が帰った後、飲み食いした部屋を綺麗に片付け、洗濯も終わらせ、一眠りしようかと思ったところに、バイト先から電話がはいり急遽出勤になった

22時、バイトも終わり、風呂に入り、残っていた酒を飲みながら録画したテレビ番組を見ていたらいつの間にか朝方になっていた

『さすがに、寝ないときついな』

そう思った矢先

ピンポーン

ピンポンピンポンピンポーン

『うるっさい!!』
「おはようございます!彼方さん!」
『・・・あ?』






1月22日






「すいません!急に来ちゃって」
『こんな朝早くから・・・迷惑だからかえっ「迷惑っすか!!」・・・いや、とりあえずあがれ』
「はいっす!」

ニコニコしながら玄関で靴を脱ぐ赤也

『来るならあらかじめ言っとけよ』
「メールしたっすよ?見てないっすか?」
『・・・』

そういや、昨日国光と精市が来てから一度も携帯を確認していない

『いや、返事待てよ』

携帯確認しておくんだった
こいつ来るってわかってたら、夜ちゃんと寝たのに

「それに、聞いたんすよ。真田先輩から」
『なにを』
「来てたんすよね、幸村先輩!!」
『・・・弦一郎に聞いたのか』
「はいっす!!だから俺も行っていいかなーと思って・・・」

あの野郎。めんどくさいやつにめんどくさいこと教えやがって

「で、でも俺、まだいると思って・・・」
『あ?』

ぼそぼそ喋ってるせいで、ほとんど何にも聞こえないぞ

「あ、や…(来たはいいものの、まさか、二人っきりだとは思わなかったっす・・・)」
『まあいいや、なんか飲むか?』
「いいんすか!」
『何がいい?』
「何でもいいっす!!」

何でもいいが一番困るな
酒がまだ残ってる
けど、こいつまだ未成年だっけ??

でも飲めたとしても、めんどくさいことになりそうだからやめておこう

やることやって、やっと寝れると思ったのに

『コーヒーでいいか』

眠気覚ましにもなるし

そう思い、インスタントコーヒーを淹れる

マグカップ・・・蔵ノ介のでいいか

『ほら』
「い、いただきます」

フーフーと息を吹きかけ、そっとマグカップに口をつける赤也
猫舌か?

『お前学校は?』
「休みっす!!」
『そうか今日日曜日か』
「彼方さんは、えっと・・・(俺、彼方さんが何してるのか知らねえ!)」

マグカップを握りしめ、口ごもる赤也
そうか、こいつ俺が今何してるのか知らないのか

『仕事。休みだよ、たまたま。お前俺いなかったらそのまま帰るつもりだったのか?』
「仕事…(彼方さん、もう働いてるんすね)あ、いなかったら、観光でもして帰ろうかと」
『ふーん。精市なら朝帰った。会えなくて残念だったな』
「え?」
『?精市がここにいたから、会いに来たんだろ?』
「ち!違うっすよ!」
『はあ?さっきそういったじゃねえか』
「そ、そういう意味じゃなく」

じゃあ何しに来たんだこいつ

「め、迷惑っすか」

さっきよりさらにマグカップを握りしめ、下を向く赤也

『迷惑っていったら帰るのか?』
「うっ…迷惑なら、帰るッす」
『はあ、そもそも何しに来たんだよ』
「何って…(俺幸村先輩が来てるって聞いたから、そこに乗り込もうってことしか考えてなかった…どうしよう)」
『ま、俺しかいないけど、ゆっくりしていけよ』

こんな泣きそうなやつを追い出すほど、鬼ではない

大方、家族と喧嘩したとかで、家出でもしてきたんだろ

「彼方さんっ!(あああ、頭っ!?)」

相変わらず、もじゃもじゃだな

『ふぁ〜・・・』
「あ、あれ?眠いんすか?」

我慢していたけど、やっぱコーヒーくらいじゃ眠気は覚めねえか

『出かけるか』
「え?」

このままここに居たら、赤也そっちのけで寝てしまいそうだ

『俺がいなかったら観光するつもりだったんだろ?ここに居てもすることないし』
「行く!行くっす!!」
『ん、着替えるから待ってろ』

隣の部屋へ服を取りに行く

寒いな・・・
せっかく向こうの部屋暖まってるんだから、こっちで着替えるか

「え、ここで着替えるんすか!?」
『あ?外で着替えろってことか?』
「いや、ちがっ。トイレ行ってくるっす!」

俺が脱ぎ始めるやいなや、慌てて部屋から出ていく赤也

『さむっ』

少し目が覚めた


『行きたいところあるか?』
「道頓堀!!行ってみたいっす!!」
『行ったことないのか?』
「はい、実は・・・」
『別に何かあるわけでもないぞ。んじゃ、飯でも食いに行くか』

ダウンジャケットを羽織、赤也と二人家を出た。



電車に揺られること数分



「はあー。腹減ったっす!いろんな匂いするっすね!」
『何食う?』
「やっぱたこ焼きっすよ!」
『はは、そうか』

ホントに初めてきたんだな
目がキラキラしてる
子どもかよ

「たこ焼き屋、どこのが美味しいんすか?やっぱたくさん並んでるところの方がうまいんすかね」
『さあ、俺もこっちきてからそんなに経ってないからな。あんまり詳しくねえ』
「そうなんすね」
『蔵ノ介はここが好きだって言ってたぞ』
「くら?(どっかで聞いたことある名前・・・)」
『白石蔵ノ介』
「しらいし・・・!?ああ!あの、エクスタシーの!!」
『エクスタシー?』

何言ってんだこいつ

「な、仲良いんすか!!」
『・・・まあ』

ずっと気になってたんだが、蔵ノ介の名前出すとみんな食いついてくるよな
なんだそんなに人気者だったのか?

「い、今も、よくあってたりとか?」
『会ってるっていうか。うーん』

一緒に住んでるとは言わないほうがいいのか??

「彼方さん?(な、なんすかその顔)」
『お前には関係ないだろ』
「!?な、何で隠すんすか!!付き合ってるんすか!!」
『はぁ?!んなわけあるか、ふざけるなよ』
「だって!!」

付き合ってるなんて、どうやったらそういう考えがでてくるんだよ

人が大勢行きかう道でわめく赤也

めんどくさいやつだな

『一緒に住んでるだけだ』
「一緒に住んでっっ!?ええ?もう同棲してるってことっすか?!」
『何言ってんだお前』
「彼方さんが訳わかんないこと言うからじゃないっすか!!」
『そのままの意味だろ』
「だから、同棲してるってことっすよね!」
『同棲っていうな。同居って言え』
「何が違うんすか!!」

かなり混乱している赤也

『全然違うだろ。意味検索してみろ』

俺がそういうと、おもむろに携帯を取り出した

ホントに調べてやがる

「あった。えー同棲は、正式に結婚していない男女が、同じ家で一緒に暮らすこと」
『ほお、んで同居は?』

赤也が携帯と睨めっこしている間にたこ焼きを二つ注文する

「えーっと、同居は、家族が一つの家で一緒に生活すること・・・やっぱりもう家族ってことっすか!!!」
『はあ?ちょっと貸せ!』
「あ!」

赤也から携帯を奪う

『2番の方だろ、家族以外の人が同じ家に住むこと』
「でもこれ叔父の家にって」
『例文だろ。他のも見てみろ』
「貸してください!」

そう言ってもう一度検索を始める赤也

その間に出来上がったたこ焼きを二つ受け取る

「同居とは、」
『あったか?』
「3人以上の人が一緒に住むことで、恋人やそれに近い場合などでは使われない」
『ほらな』
「もう一人は誰っすか」
『は?』
「三人以上が一緒にって書いてあるじゃないっすか!もう一人いるんすね!」
『いや、いない・・・』
「じゃあ同居にもならないじゃないっすか!?」
『めんどくさいなお前』

もうどうでもいいだろ

「んな!?」
『たまたま部屋が隣で、家賃もったいないから一緒に住もうってなったんだよ。それだけ』
「一緒に住もう・・・それ、彼方さんのほうがいったんすか」
『・・・忘れた』
「そこ大事っすよ!!」

一番どうでもいいだろ

『ほら、向こうのベンチでたこ焼き食うぞ』
「あれ?いつの間に買ってたんすか!」
『お前がくだらねえことしてる間に』
「くだらなくないっすよ!」

まだぶつぶつ言っているものの、俺の後ろをちゃんとついてくる

『ソースと醤油どっちがいい』
「え?どっちも食べたいっす!!」
『欲張りな奴』
「うっ、だって」
『どっちも食えよ』
「半分ずつにしないっすか!!」
『んじゃそれで。先に醤油もらうな』
「んじゃ、こっちいただきます!」

そういって、二人でたこ焼きを頬張る
うん、俺も結構ここのたこ焼き好きかも

「熱い!!でもうまいっす!!」
『ああ、うまいな』
「そっちもください!」
『もうか?』
「交互に食べたいんす!」
『ほら』
「あー!ダメっすよ!ここにいれたらソース味になっちゃうじゃないっすか!!」
『めんどくさいやつだな』
「めんどっ・・・(また言われた)」
『んじゃほら、口開け』
「え」
『早く』

熱くないように半分にしてやるから

爪楊枝でさして、赤也の口へ持っていく。
落ちるだろ、早く食え

「っ!(彼方さんからあーん彼方さんからあーん彼方さんからあーん…!)」
『おい早くしろ』
「は!あーっはいっ!」
『ん』
「あふいっ。ん、うまいっす!」
『よかったな』

嬉しそうにたこ焼きを頬張る赤也
こういう顔見ると、無性に

「彼方さん!」
『あ、悪い。嫌だったか』
「や、あの・・・恥ずかしいっす」

赤也の髪をモフモフとなでたらうつむいてしまった

「彼方さんもくいますか」
『もらう、あ』
「え・・・あ、はい(躊躇が全くない・・・)」

口を開けソース味のたこ焼きを貰う
うん、ソースもうまい

「次何食うっすか!!」

たこ焼きも食べ終わってしまった
俺は結構腹いっぱいなんだが、赤也はまだまだ食べれるみたいだ

『好きなもん食えよ。俺はもういいから』
「え?もうお腹いっぱいなんすか?」
『ああ』
「あ!じゃあ他のところ行きましょう!!!」
『他のところ?どこだよ』
「あれ見たいっす!グリコの!」
『ああ、すぐそこだぞ』
「まじっすか!行きましょう!」
『走るなよ。場所知らねえだろ』
「そうでした」

赤也が走ってゴミを捨てに行く

なんかこいつ、犬みたいだな
散歩大好きな

『犬欲しいな』
「え?」
『いや、なんでもない』

そうして、有名なグリコの看板まで案内して写真を一枚
それから、お好み焼きを食べたり、ふらふら歩きながらおやつを食べたりと、とにかく食べまくった(赤也が)

「いやほんと、大阪って美味しいものたくさんあるっすね!」
『ほんとよく食うな』

赤也に付き合ってたら自然と眠気もとんでいた

「彼方さん」
『ん?』

道頓堀を堪能したらしい赤也は、ようやくそろそろ帰ると言い出した
気付いたら空も真っ暗だ

今は赤也を大阪駅まで送っている最中だ

「今日はいろいろありがとうございました」
『なんだよ、ちゃんとお礼とか言えるんだな』
「言えるっすよ!!」
『ははっ』
「うっ、それ、嫌っす」
『あ、悪い』

また無意識に頭をなでたら、不機嫌そうな顔をされた
そうか、そんなに嫌だったか

「だからその!!俺以外の人にしたら嫌っす!!!」
『は?』
「・・・・何でもないっす・・・」
『・・・』
「ちょ!!」

ほんとめんどくさいやつだな
そう思いながら、ちょっと強めに撫でておいた

「また来ていいっすか?」
『俺の返事を事前に聞いてからな』
「わ、わかったっす!今度は違うところ行きましょう!」
『おう、観光な。俺でいいなら付き合ってやるよ』
「ほんとっすか!!あっじゃあ俺、海遊館行きたいっす!!」
『そこはこの前行ったばかりだから却下』
「んな!?誰と行ったんすか!!白石蔵ノ介っすか!!」
『ちげえよ。ほら、発車の時間間に合わねえぞ』
「ちょっとはぐらかさないでくださいよ!彼方さん!誰っすか!!」
『じゃあな』
「っ俺とも水族館デートしてください!!」
『うるせえ』

改札を通った先でデカい声で言う赤也

その後やばいやばいと言いながらホームへ急ぐ赤也に小さく手を振って見送った

『ふぁ、ねむ。帰って寝よ』

昨日からちゃんと寝れてないし
あくびをかみ殺して、駅を後にする





もう誰も邪魔するなよ






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