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□どうか生きていて
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 私は俯く。

 ここにもう少し留まっていれば、不安は消える?
 解決する?

 私は結論が出ないまま、それでも頷いた。

 「うん。少し待ってもらえる?」

 白龍も私の言葉に頷いた。

 「わかった。」

 私はほっと顔がほころんでしまった。

 すると、それを見たヒノエくんが笑って言った。

 「もしかして、俺と離れたくなかった?」

 私は、ヒノエくんが元気付けようとしてくれていることに気付いて笑った。

 「ありがとう、ヒノエくん。私は大丈夫。ごめんね。」

 「流されてしまいましたね、ヒノエ。」

 弁慶さんの言葉に、ヒノエくんはちぇっとそっぽを向いた。

 それにしても…。
 私のこの胸騒ぎは、何?

 元の世界に帰ることが先延ばしされても、私の胸騒ぎは消えることがなかった。

 むしろ、さっきより増長されたような…。

 時が一刻一刻と迫る度に、心の中に広がっていく不安。

 何が不安なの?

 「それにしても。」

 突然、九郎さんが声を上げた。

 「望美が帰らないとなると、泰衡殿が来たら、俺は怒られてしまうな。」

 え?

 私は九郎さんの言葉に振り返る。

 泰衡さん…?

 私の中の霧が、一気に晴れていくのを感じた。

 「どういう意味ですか?」

 私の言葉に、九郎さんはあぁと呟き、

 「望美が元の世界に帰るから、見送りに来いと言ったんだ。まだ来てはいないが…。」

 それを聞いた瞬間、私は一気に走り出していた。
 あてはなかった。
 ただ、胸騒ぎの正体はわかった気がした。

 泰衡さんだ…!
 私たちの世界で泰衡さんはどうなった?
 殺されたのだ。
 私たちの世界では、泰衡さんは秀衡さんが亡くなった後、九郎さんを裏切った。
 そして、自刃に追いやった。
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