long2

□snow drop 第十話
2ページ/7ページ


 「神子様、それは…。」

 すると、泰衡さんは今まで銀に向けていた険しい眼差しを私に向け、

 「それで?どこに行くつもりなんだ?」

 ぐっ、矛先が私に…。

 油断していた私は誤魔化そうと、乾いた笑いを浮かべる。

 「いや、だから散歩…、」

 「日もまだ昇らない内にか?」

 間髪入れずに突っ込みを入れる泰衡さん。

 くっ、いつも以上に鋭い突っ込み。

 「そう!早起きは三文の得って言うでしょ?」

 こうなったら、もう自棄だ!

 バレバレの嘘を明るく言った私に、眉を寄せる泰衡さん。

 う〜。
 絶対、バレてるよなぁ。

 「戻るぞ。」

 罰が悪そうにしている私に泰衡さんが言った。
 有無を言わせない響き。
 追及しない代わりに、命令に従えという意味なのだろう。

 でも…。

 ここまで来て、後には引き下がれない。

 「戻らない。」

 私も言う。

 そう、引き下がれない。

 「だから、そこをどけて。
 ここにいる人たちの決意を踏みにじるわけにはいかないから。」

 「神子様…。」

 横で銀が呟く。

 もう引き下がるわけにはいかない。
 ここにいるみんなのためにも。
 だから、どうか見逃して。
 絶対に成功させるから。

 「…。」

 泰衡さんはちらりと銀を見て黙り込む。
 私は泰衡さんが揺らいでいるのだと思って、更に言葉を続ける。

 「泰衡さん、絶対成功させるから…、」

 「…まだわからないのか。」

 その時、私の言葉を遮って、泰衡さんが言った。
 苦しげに掠れた声。

 …え?

 どきっとした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ