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□どうか生きていて
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 胸騒ぎがする。

 私は無量光院についた瞬間から、得体の知れない胸騒ぎを覚えていた。

 何故だろう?

 空は青く澄みきっている。

 もう自分の世界に帰れるというのに。

 「神子、どうかした?」

 白龍の言葉に私は我に帰る。

 「あ、うん。なんでもないの。」

 そう言って笑って見せたけど、白龍は心配そうに私を見る。

 何も心配することはなくなった。
 茶吉尼天は倒したし、平泉は安寧の地となった。
 九郎さんたちの身柄も保証された。
 それなのに、何故…?

 「心配事でもあるのかい?」

 そう言って、私の顔を覗き込んだのはヒノエくんだ。

 「あ、うん…。」

 でも、その心配事がわからない。
 どうしたの?何が心配なの?

 自問自答しても、思い浮かばない。
 ただ、得体の知れない不安が心を渦巻く。

 「教えて頂けませんか?やはり心残りのあるまま、帰るのは嫌でしょう?」

 弁慶さんが優しく微笑んで言った。
 私はどうしようと、顔を上げた。
 みんな、心配そうに私を見ている。

 だめだ、これじゃ…。

 私は笑って言った。

 「ごめんね。今日でお別れなのに、こんな顔して。私、駄目だね。」

 言った私に、朔が心配そうに顔を覗き込んだ。

 「望美。何か心配事があるんでしょう?」

 朔の真っ直ぐな瞳に、私は戸惑いながら言った。

 「うん…。
 ここに着いてから、胸騒ぎがするの。でも、どうしてかわからなくて。
 だから気にしないで。ね?」

 最後を笑って言った私の言葉に、リズ先生は白龍を振り返った。

 「白龍。今すぐ神子を元の世界に戻さなくても大丈夫なのだろう?」

 リズ先生の言葉に私は驚いた。

 「先生!?」

 すると、白龍は私に向き直り、

 「うん。リズヴァーンの言う通り。神子、どうする?」
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