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□snow drop 第三話
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 喧騒の中、それでも私の周りは静かだった。
 銀色の髪の下に隠れた瞳が一瞬だけ、満足そうに細められる。
 それからは、スローモーションのようだった。
 わかっていた。
 もう、何度もこの人をこの手にかけた。
 それでも、咄嗟に手を伸ばす。
 その人は私の手をすり抜け、暗い暗い海に落ちて行った。
 真っ赤な血を振りまきながら。

 「知盛っ!!」

 叫んだ途端に広がったのは、青い空。

 夢か…。

 私はむくりと起き上がる。

 寝汗かいてる…。

 私は息をついて、膝を抱えた。
 私が来ていたのは、泰衡さんに教えてもらった池の前。
 結局、泰衡さんに付き合えと言った割に、ここには1人で来ていた。
 1人になりたい時は、ここに来る。
 私は最近、何度も同じ夢を見る。
 知盛の最期。
 そして、景時さんが私に銃口を向け、宝玉が離れた時のことを。

 「俺は、もう、君を守る八葉じゃ、ない…。」

 膝におでこを乗せる。
 私はそっと目を閉じる。
 白龍の神子なんて言われても、私は結局何もしてない。
 いろんな人を死に追いやり、色んな人が私から離れていく。

 疲れたな…。

 ここ最近になって、私は弱気になっていた。
 自分でもわかる。
 白龍の神子であることが重荷だ。
 私は何も救えない。
 怨霊を封印して、怨霊を救うことしか出来ない。
 他は奪うだけ。
 そう思うと、大きな溜息が出た。

 「はぁ〜。」

 すると、後ろから声がした。

 「どうした?」

 その声に私は振り返る。

 「げっ!!」

 思わず声を上げ、声の主は不機嫌そうに眉を上げた。

 「『げっ!!』、とはなんだ。『げっ!!』とは。」

 泰衡さんだった。
 横に金もいる。
 私は気配を消して、後ろに立っていた泰衡さんにむっとして言った。

 「どうして、ここにいるの?」

 「それはこちらの台詞だ。どうやら俺なしでも、ここには来られるみたいだな。」

 むっ。
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