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□snow drop 第四話
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「何をしているんだ?こんなところで。」
げっ!
いつもこの場所、伽羅御所で、めざとく声をかけてくる人物に、一人しか心当たりのなかった私は、肩を振るわせた。
が、よくよく考えれば、声の主は心当たりの人物とは違うと判断。
泰衡さんの声じゃなくて、この声は…?
「あれ、九郎さんに弁慶さん。何をしているんですか?」
「それは俺が聞いているんだ。」
何よ。
振り返った先に、憤然とする九郎さんと、苦笑する弁慶さんがいた。
「私はここを通り道に、金を探しに…。」
むぅとしながらも私は答える。
すると、弁慶さんは、
「金ですか?金なら先ほど、伽羅御所の武士たちと一緒に出て行きましたよ。」
「金は人懐こいからな。」
えぇっっ!!
私はがっかりする。
何よ、本当にあそこによく行くの?
一回も来ないんですけど!
はっとする。
まさか、泰衡さん、私に嘘教えてないよね?
「それでは、九郎、帰りますか。」
「そうだな。」
「望美さんも一緒に帰りましょう。」
「は〜い。」
ちぇと思いながら、私は歩き出したけれど、思い当たって尋ねてみる。
「ここに来たのは、どうしてなんですか?」
私が聞くと、
「今後の方針について、話合うためですよ。」
弁慶さんがにっこり微笑んで言った。
「方針?って言うと、やっぱり…?」
これから始まるであろう、鎌倉との対決…。
胸がちくりと痛んだ。
ううん、私は決めたんだ。
私は小さく首を振る。
この手に残ったものを守ろうって。
迷ったら駄目。