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□snow drop 番外編
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 「神子殿、話がある。」

 高館にやって来た泰衡さんは、縁側で私と朔が談笑しているにも関わらず、鋭い瞳で睨んで言った。

 やば、怒られる!

 と思ったけれど、天邪鬼な私は、わざとらしく大きな溜息をつき、目を伏せて言った。

 「ごめん、泰衡さん。私には心に決めた人が…。」

 「なんの話をしている!?」

 目を剥いて言った泰衡さんに、私は大袈裟に笑って、

 「嫌だな〜、冗談でしょ、冗談。本当に泰衡さんはくそ真面目なんだから。」

 私が言うと、泰衡さんは眉を上げ、

 「くそだと?」

 どうしてそこにだけ反応するのよ。

 「いや、だからくそ真面目だってば。後ろに『真面目』って付いてるでしょ?」

 「くそを付け足す意味がわからん。何故『真面目』の前にくそを付ける必要がある?」

 何!?そんなにくそが嫌なの!?単体じゃないんだよ!?

 と思ったけれど、それを言ったら、この楽しい会話が終わってしまうと、私は気をきかせて、

 「じゃあ、死ぬほどくそ真面目。」

 「望美…。」

 それまで黙って聞いていた朔が、泰衡さんを哀れに思ったのか、私を小さく睨んで言った。

 「だってさ〜。」

 私が言うと、泰衡さんは自分がからかわれているとようやく気付き、腕を組んで憮然と私を睨む。

 睨んだって平気だもんね!

 私も負けじと睨み返す。
 と、そこへ九郎さんたちがやって来た。

 「泰衡殿、珍しいな。何か用か?」

 その声に泰衡さんは九郎さんを振り返ると、

 「九郎、一体神子殿にどういう教育をしている?先程からくそくそ連呼して嘆かわしいぞ。」

 「は!?」

 素っ頓狂な声を出して、聞き返す九郎さんの横で、将臣くんがあぁと呟いて、

 「望美はもとから口が悪いからな。九郎に言っても無駄だぜ。」

 何よ!

 「いや、絶対兄さんのせいだよ…。」
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