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□snow drop 第十一話
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 色々問い詰めたいことはあったけれど、それをじっと堪えた。
 そういう場合じゃないし。
 必死に走って、追っ手を振り払い、とうとう奥大道に到着。
 もう、ここまで来たら、本当に後戻りは出来ない。
 勿論、するつもりもないけれど。

 「弁慶の言った通りだな。あれが本陣だろう。」

 将臣くんの言葉に、私は無言で頷く。
 私達は奥大道の手前の小さな森で身を潜めていた。
 私達の視線の先には、白い旗をはためかせる鎌倉軍が陣を構えていた。

 「行くか?」

 将臣くんの言葉に、私が頷こうとした時、違和感を覚えた。

 あれ、景時さんは?

 景時さんの姿が見当たらない。

 もしかしたら、陣の奥の方にいるのかもしれない。

 そうは思ったけれど、違和感はどうしても拭えなかった。

 なんだろう、胸騒ぎ?

 「どうした?」

 将臣くんの怪訝気な声に、私はどう答えたらいいのかわからず、無言で返す。

 あの大軍だ。
 奥の方に景時さんが陣を構えていても不思議ではない。
 それに見過ごしているだけかもしれないし。
 それでも、何故か違和感を覚えた。
 私は鎌倉軍から視線を外さずに、

 「将臣くんは、景時さんがどこにいるかわかる?」

 すると、将臣くんは私の横で、鎌倉軍にもう一度視線を戻し、

 「いや、わかんねぇ。奥にいるんじゃないのか?」

 そうなのかな?

 景時さんは聡明な人だ。
 本当は戦が好きではないのも知っている。

 そんな景時さんなら、どうする?

 戦を早く終わらせようとするだろう。

 早く終わらせるには?

 浮かんだのは泰衡さんの顔。

 泰衡さんを狙うはずだ。

 果たして景時さんは正攻法で、泰衡さんを狙うだろうか。
 沢山の犠牲者が出るだろう、正攻法で。
 泰衡さんは、ここから遠く離れた大社に陣を構えることになっている。
 それを知らないはずはない。

 それなら…。

 「ねぇ、ただの勘なんだけど、景時さん、ここにはいない気がする。」
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