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□snow drop 第十二話
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 先生の強行軍で大社に到着。
 大社では既に奥州と鎌倉の武士が入り乱れていた。
 奥州の武士は思ったより、持ちこたえている。
 泰衡さんの指揮によるものなのだろう。
 しかし、奇襲を成功させた鎌倉軍の士気には及ばず、見るからに劣勢となっていた。
 その戦場をすり抜け、大社の長い階段を駆け上る。

 「神子、大丈夫か?」

 「平気です!!」

 押し寄せる不安を振り払うかのように、必要以上に大きな声で返事をした。
 長い長い階段を駆け上る。
 そこかしこに横たわる奥州や鎌倉の武士たち。
 非情でも今は素通りするしかない。
 私は必死に階段を駆け上った。
 そして…。

 「泰衡さん!!」

 登りきったその先には、景時さんと対峙する泰衡さんがいた。
 泰衡さんは目だけを動かして、私を確認すると、驚いて目を見開いた。

 「なっ、神子殿…!?」

 私は泰衡さんが無事だったことにとりあえずほっとした。

 よかった、無事だった…。

 泰衡さんと景時さんは後ろに下がり、一旦距離を置く。
 その瞬間に私は泰衡さんに駆け寄った

 「大丈夫?」

 私は刀を抜きながら聞く。

 「あぁ。」

 泰衡さんは景時さんを睨みながら答える。
 見れば、大きな怪我はしていないようなので、安心する。
 ほっと息を吐くと、私は景時さんに目を向けた。
 目が合うと景時さんは苦しげに目を伏せた。

 「景時さん…。」

 思わず呟く。
 胸が痛かった。
 辛くて胸が締め付けられた。

 どうしてこうなったんだろう。
 どうして…?

 もうそれしか考えられない。
 今までずっと一緒に戦って来た人に、私は刀を向け、そして銃を向けられている。
 目の前にいるのに、とても遠い存在になってしまった景時さん。
 その目は悲壮な決意に満ちていて、どこか泰衡さんを思わせた。
 無駄だと感じつつも、私は口を開いた。

 「景時さん、お願い、ここを退いて。鎌倉の本陣はもうすぐ落ちる。本陣を落とした九郎さん達も直にここに来るから。」

 「…。」

 景時さんは何も答えない。
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