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□snow drop 第十三話
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 政子さんを退いて、鎌倉軍は撤退した。
 奥州軍の勝利。
 もう、奥州を攻めないと、頼朝さんが約束した。
 きっと、景時さんも動いたのだろう。
 私は…、

 この地を去ることになった。

 「やっと、帰れますね。」

 譲くんが言った。

 そうだね。

 泰衡さんとの別れ。

 これでいいのだ。
 だって、私の願いは叶ったのだから。

 「うん…。」

 私はそれしか言えない。
 無量光院の空を見上げた。

 もう、会えないんだ。
 泰衡さんと…。

 わかっていた。
 初めから、こうなることは。
 でも、やっぱり悲しい。

 空には鳥が舞っている。
 気持ちよさそうに。

 ううん、これでいいのだ。
 これで。
 良かった、奥州が平和になって。

 自然に笑みがこぼれる。

 これで…。
 元の世界に帰って、心置きなく青春を謳歌出来る。
 うん、これで…。

 こうして、私の恋は終わりを告げるのだろう。
 好きな人のために、何かすることがこんなに素晴らしいことなんて気付かせてくれた泰衡さんに感謝しよう。

 ありがとう、泰衡さん。
 さようなら、大好きだったよ。
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