log

□log2
1ページ/2ページ



 どうしてでしょうね
 あの時、すぐに返事が出来なかったのは



 「お前は俺を信じられないのか?」



 「望美は元気だろうか。」

 ふと遠くを見つめて言った九郎。
 僕は浅く溜息を吐きます。

 そんなに気になるなら、付いて行くか、引き止めるかすればよかったのに。

 僕の部屋で、掃除をしろと言いつつ上がりこみ、座れる場所を確保して言った九郎に、僕は書物から目を上げて言いました。

 「元気でしょう。望美さんは今頃、将臣くん、もしくは譲くんとうまくやっていますよ。」

 僕の言葉に目を剥いて振り返った九郎。

 本当に、
 なんて不器用な人なんでしょうね。
 まぁ、僕も人のこと言えないんですけど。

 「何故、言わなかったんですか?」

 僕の問いに、九郎は再び遠くを見つめながら言いました。

 「何がだ?」

 「望美さんに、『好きだ』と。」

 僕はそう言って、再び書物に目を落としました。
 九郎が今、どんな表情をしているかは、容易に想像出来ましたから。

 「…。」

 黙りこむ九郎に、僕は書物から目を上げます。
 俯いている九郎に、僕は更に言いました。

 「望美さん、きっと待ってましたよ。」

 「…。」

 苛々しますね。
 らしくない。

 「離れるわけにはいかないだろう?まだ何があるかわからない。」

 あぁ、本当にこの人は…。

 僕は苦笑する。

 そういう生き方は僕に任せればいいのに…。

 「自分の気持ちを押し殺すなんて、君には無理ですよ、九郎。」

 目を剥いて振り返った九郎。
 しかし、すぐに真面目な表情になり、

 「いや、出来る。そして、この世界が平和になったら、あいつの世界に行くさ。
 それからでも、遅くはないはずだ。」

 その言葉を聞いて、少しだけ僕は和む。

 そうですね、遅くはないはずです。
 きっと、望美さんは待っているでしょう。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ