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どうしてでしょうね
あの時、すぐに返事が出来なかったのは
「お前は俺を信じられないのか?」
「望美は元気だろうか。」
ふと遠くを見つめて言った九郎。
僕は浅く溜息を吐きます。
そんなに気になるなら、付いて行くか、引き止めるかすればよかったのに。
僕の部屋で、掃除をしろと言いつつ上がりこみ、座れる場所を確保して言った九郎に、僕は書物から目を上げて言いました。
「元気でしょう。望美さんは今頃、将臣くん、もしくは譲くんとうまくやっていますよ。」
僕の言葉に目を剥いて振り返った九郎。
本当に、
なんて不器用な人なんでしょうね。
まぁ、僕も人のこと言えないんですけど。
「何故、言わなかったんですか?」
僕の問いに、九郎は再び遠くを見つめながら言いました。
「何がだ?」
「望美さんに、『好きだ』と。」
僕はそう言って、再び書物に目を落としました。
九郎が今、どんな表情をしているかは、容易に想像出来ましたから。
「…。」
黙りこむ九郎に、僕は書物から目を上げます。
俯いている九郎に、僕は更に言いました。
「望美さん、きっと待ってましたよ。」
「…。」
苛々しますね。
らしくない。
「離れるわけにはいかないだろう?まだ何があるかわからない。」
あぁ、本当にこの人は…。
僕は苦笑する。
そういう生き方は僕に任せればいいのに…。
「自分の気持ちを押し殺すなんて、君には無理ですよ、九郎。」
目を剥いて振り返った九郎。
しかし、すぐに真面目な表情になり、
「いや、出来る。そして、この世界が平和になったら、あいつの世界に行くさ。
それからでも、遅くはないはずだ。」
その言葉を聞いて、少しだけ僕は和む。
そうですね、遅くはないはずです。
きっと、望美さんは待っているでしょう。