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 「はい、ヒノエくん!どっちだ?」

 突然の言葉に眉をひそめる。

 「突然どうしたのさ、姫君?」

 にこにこしながら、望美は握り締めた両手を突き出している。

 束の間の休息。
 二人で嵐山まで来ていた。

 「いいから、いいから。さぁ、どっち?」

 小首をかしげて、得意げに聞く望美に、なんだか苦笑する。

 いつもは意志の強い美しい女性なのに、急に子供っぽくなる。

 まぁ、そういう部分も含めて、自分は惹かれているわけだけれど。

 望美が何をしようとしているか、容易に予想は出来たけれど、俺はあえて乗ることにした。

 「じゃあ、こっち。」

 俺は望美が突き出した右手を指差す。

 すると、望美は笑ってその手を広げた。
 赤くて小さな玉が顔を出す。

 「あったり〜!はい、あげる!」

 「これ何?」

 受け取りながら聞くと、望美は得意げな笑みを見せ、

 「飴だよ。私の世界の。」

 「ふ〜ん。」

 透明な包みから飴を取り出して、口に放り込む。

 甘酸っぱい。

 「美味しい?苺味だよ。」

 望美の言葉に、俺はあることを思い付いてにやりと笑う。

 「わけてあげようか?」

 「え?どうやって?」

 きょとんと聞き返す望美。

 鈍感だな。

 俺は望美の手をとって抱き寄せる。

 「うわっ、ヒノエくん、待って!」

 俺のやろうとしていることを、やっと理解した望美は慌てて言った。

 「いいよ!ヒノエくんにあげたんだから!」

 望美がそう言っている隙に、俺は唇を重ねる。
 そのまま、もらった飴も押し込んでやろうかとも思ったけれど、せっかくの姫君からの贈り物なので、やめることにした。

 顔を離すと、望美は顔を真っ赤にして俯いている。
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