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□11.霧中の楼閣
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天井の高い大広間に通されると、そこで待っていたのはジル・ド・ラバールという名の貴族だった。
冷たい微笑を顔に貼り付かせ、灰色の瞳からは温情など感じられない。
左目には額から上頬にかけて大きな傷があり、単眼鏡をかけていた。



「……なるほど」

コルビオの報告を聞き終えるとラバールは鼻で笑い、自らが座る玉座から跪く俺たちを冷ややかに見下ろした。

「……それで、貴様らは私を楽しませてくれるんだな?」

「はい」

顔をあげ、その男と目線を合わせる。
一瞬にして射すくめられたかの様な錯覚に陥るが、拳を握って奮い立つ。

(一筋縄でいける相手じゃなさそうだが……ハナから気おされる訳にゃいかねェからな)

「私達シャムール一座一同、驚異の技で閣下をお喜びさせましょう。頭数はそちらに減らされてしまいましたが……何、ご心配はいりません」

灰色の瞳を強く見据え、不敵な笑みを浮かべてみせる。
ラバールは片眉を上げ一瞬黙り込んだのち、にこりと微笑んだ。

「……楽しみにしていよう。夜まで疲れを癒せ。用があればコルビオに申しつけろ。では、晩餐を楽しみにしている」



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