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□17.策謀の行方
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「確か……確か、リオネという名の娘が正賓として城に預けられている。そいつが確か、シャムール一座の者だった」
絞り出すようにしてそう言うと、コルビオは顎に手を当てて「ふうん」と呟いた。
「シャムールからの客人か……。今もその娘は城に?」
「ああ。……だが、今は寵姫として身を置いているはずだ」
「寵姫かぁ。何とも好色な王さまだね」
唇を曲げて笑うコルビオに、ウォレスは後ずさる。
「これだけ話したんだ、もう行っていいだろう!?」
冷や汗を浮かべてせがむ彼に、コルビオはちらりと視線を投げかけた。
「きみさあ、本当に国王を恨んでないの?」
心の隙をつく、その言葉。
「何……?」
「免官になったのは本当にきみのせいなのかな。あまりに無情な仕打ちだとは思わないかい?」
「国を……裏切れってのか」
わずかな声を漏らしたウォレスに、コルビオは例の禍々しい笑みを浮かべた。
「裏切れとは言ってないよ。ただ協力して欲しいだけさ。
仕事ぶりによっては、きみには想像もつかない様な褒美を取らせよう。金子に女、ボルトアでの確かな地位……何でも好きなものを用意する」
その一言は、ウォレスの喉をごくりと鳴らした。
何でも──好きなものを……?
しかし。
『──お前たち警備兵には、苦労をさせた』
脳裏によみがえる、アルトア国王のあの言葉。
だが、しかし……今ここで断れば、十中八九殺される。
「……きみさえ良ければ、僕たちの仲間になってくれたまえ」
にこりと笑って差し出されたコルビオの手。
畜生、俺は……!
そしてウォレスは──コルビオのその手を、恐る恐る握り返した。
fin.