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□18.願意
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ボルトア王都ヒッタイト。
砂と岩ばかりが広がる国土のなかで、その都は水と緑に恵まれたオアシスである。
白亜の城奥で玉座に座しているのは国王ラムセス。
弱冠十八才の若者だった。
18.願意
「使者はどうなった、……捕虜の解放は?」
「残念ながら……ラバールの手中に落ちた様です」
ラムセスの問いに、摂政ムワタリは苦渋に満ちた顔で言葉を返した。
「ラバールからの返答はありません。恐らくは皆……囚われたか、殺されたかと」
「くっ……!」
やや少年のあどけなさが残る美しい顔立ちを歪ませ、ラムセス国王はきつく歯を食いしばった。
「いったい私のためにどれほどの血が流されたのか……。
ラバールは我が首を所望しているのであろう。私の頭を切り落とし、奴に送り届ければいい!」
玉座の肘当てに爪を立て激しく言い募ったラムセスを、ムワタリは鋭く睨みつける。
「陛下、滅多なことを仰いなさりまするな!そのような所行、出来るとお思いか!」
「私一人の首で済むのなら安いものだ。──さすれば虜囚となり殺された者達に詫びることも出来よう」
嘆かわしい口調で呟き、ラムセスはこうべを垂れた。
「……戦など、決して良いものではない。何としても避けるべきだったのだ。犠牲となるのは民達なのだから……」
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