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□19.心星のもと
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小雨の降る、薄月夜。
アスリトニア王城、地下深いイベルトの部屋にて、私はカームと共にそこに立っていた。
19.心星のもと
「どうしても行くと言うんだな?」
イベルトの重々しい口調の中には、やや非難の色が含まれている。
「……うん。決めたことだから」
私がそう頷くと、イベルトは呆れたといった様子でため息をつき、首を振った。
「貴様は本物の阿呆だな。周囲の迷惑を全くかえりみない」
「…………」
痛いほど分かってる。
今、私がどんなに馬鹿なことをしようとしているか。
──それでも、私の心は決まっていたのだ。
「ごめんなさい」とだけ呟き、深く頭を下げる。
イベルトは舌打ちをして、そんな私から目線を外した。
「カーム、こいつを頼んだぞ」
念を押す彼の言葉に、隣のカームは黙り込んだまま二度頷いた。
そして足元に置かれたずだ袋と鳥かごを背負い、私を促す。
「さあ……行こう、リオネ」
イベルトがゆっくりと『扉』を開く。
その向こう側に見えるのは小さな村。
夜の帳に覆われながらも、ぽつりぽつりと点在する家の窓からはオレンジ色の光が漏れている。
「気を付けて行け」
『扉』を押さえながら、イベルトが低い声で一言呟いた。
「行ってきます」
──そうして私達は、自らの足を踏み出した。
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