main story
□21.出奔
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「リオネ様、おやすみなさいませ」
いつものように早めの夕食と入浴を済ませた私は、いそいそとユリアを送り出す。
「おやすみなさい……ユリア」
そして静かに扉を閉め、彼女の足音が聞こえなくなるまで、戸口に立ち尽くしたまま耳をそばだてた。
21.出奔
「……いいかな」
ユリアの足音が聞こえなくなってからずいぶん経った。
扉を少しだけ開けて、廊下を確認する。
──よし。誰もいない。
私は素早く扉から離れ、テーブルに二通の手紙を置いた。
「手紙、よし」
一言呟き指差し確認。
急いでクローゼットに駆け寄る。
靴を履き替え、服も着替えて。
部屋をぐるりと見渡して、家具や装飾品が汚れていたり無くなっていないことを確かめる。
……泥棒にはなりたくないし、ついでに忘れ物がないことも確認。
「忘れ物、なし」
最後に私はベッドの下から鞄を引きずり出した。
さあ、帰ろう。
シャムール一座のもとへ。
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