main story
□1.登城
1ページ/9ページ
1.登城
美しい装飾を施された大きな扉が、目の前で両側いっぱいに開かれた。
──いよいよだ。
私の前に立つ若い騎士が赤い絨毯の上を歩き始める。
彼の足元を見つめながら、私は少し震えた足取りでその後をついていく。
緊張して顔を上げることができないけれど、この絨毯の先で待っている「あの人」の視線を痛いほど感じる。
「陛下、客人をお連れ致しました」
騎士が絨毯の上に片膝をつき、頭を下げて言う。
その後ろで、私も慌てて跪いた。
「……君がリオネか」
低くて穏やかな声音に少しだけほっとした。
「はい……」
小さく声を返したら、玉座に座る「その人」が笑いを含んだ口調で言う。
「そう硬くなるな。顔を上げなさい」
その言葉に私は恐る恐る目線を上げて、声の持ち主と顔を合わせた。
赤い絨毯の先は、私が跪いているここより数段高くなっている。そしてその真ん中には絢爛豪華な玉座が二つ。
向かって左側、「その人」は座っていた。
この人が……陛下。
「私がアスリトニア国王、アルトア・ウォルゼンだ。この城を家と思い、しばしの間ここで過ごすといい」
そう言って、「その人」──アルトア国王はにこりと微笑んだ。
.