main story
□1.登城
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ルークの後に続いて管理所を出ると、目の前には黒塗りの立派な馬車が停められていた。
──ここはもう、アスリトニアなんだ。
青空のもと行く手には牧草地が広がり、遠くの方に見える大きな街まで石畳の街道が白いリボンの様に続いている。
「おい、さっさと乗れ」
ルークに声をかけられてはっとする。
「は、はい!」
私は慌てて馬車に乗り込んだ。
***
城門をくぐって城の前庭に入る。
広々としたそこには白い石が敷き詰められ、馬が歩を進める度に馬車の車輪がコトコト音を立てた。
鳴り響く高らかなファンファーレ。
整然と並んだ兵士達が、それを合図に一斉に剣先を空へ掲げて敬礼する。
幾十の剣が夕方の日差しを浴びきらめいて、とても綺麗だった。
「……すごい」
馬車の窓から覗きながら、私は小さく声を漏らした。
馬の歩みが止まり、扉が開かれる。
到着だ。
緊張がぐっとせり上がってきて、私は汗で湿った手のひらをごしごしと拭う。
私、これから──アスリトニア国王に会うんだ。
fin.