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□2.城で
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2.城で
「旅の一座、シャムールのリオネと申します……。よ、よろしくお願いします」
アルトア国王を前にして、私は緊張しながらもなんとか名を名乗った。
危うく「ふつつか者ですが」と口走りそうになる。
「よろしく。もっと楽にしなさい」
アルトア国王はくすくす笑って、優しい言葉をかけてくれる。
「はい……ありがとうございます」
王さまが笑ってくれたお陰で、ちょっと落ち着いてきたみたい。
周囲を観察するぐらいのゆとりが生まれる。
玉座に座るアルトア国王は大柄な人で、歳は三十代前半といったところ。
黒い髪はゆるやかにウェーブがかかり、きりりとした顔は威厳があって少しこわい。
けれど声を聴くと、根は穏やかな人なのかもしれない。
「!」
王さまを観察していたら、不意にばっちり目線が合ってしまった。
黄褐色の目は鷹みたいに鋭くて、一瞬体が硬直する。
「す、すみません」
思わず謝ってしまい、私はおどおどと目をそらす。
何もかも見透かされたような気がして、肝が冷えた。
「気にするな。迎えが来るまでの間、この城でくつろぐといい。分からぬことはラグニウスに聞け。……旅の話を聞きたい所だが、疲れもあるだろう。今日はゆっくり休みなさい」
そう言うと、王さまは玉座から立ち上がり去っていった。
「おい、部屋へ案内する」
背後からかかったルークのぶっきらぼうな言葉に、私は頷いた。
……会っていたのはほんの少しの時間なのに、なんだかどっと疲れが出てきた……。
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