main story

□2.城で
17ページ/17ページ


「……ルーク?」

恐る恐る、尋ねてみる。

「何でもねぇ、何でも!」

慌てた口調で言い放つとルークは書類をひっつかみ、勢いよく立ち上がって踵を返した。

ど、どういうこと?

ぽかんとする私を置いて、彼は足早に去っていく。
ぐんぐん進む足取りは、まるで止まる気配がない。

怒ってる!?

私は慌ててルークに駆け寄った。

「ルーク!ごめん──」

立ち去ろうとする彼の右腕に手を伸ばし、ぐいと引っ張る。

「………」

こちらを見たルークの顔は、さっきとは比べものにならないほどに真っ赤だった。
襟からのぞく首まで赤い。

ルークは無言のまま素早く口元を手で押さえ、私に背を向けた。

「私その、こういうの初めてで、どうしたらいいか分からなくて……ごめん」

私はおずおずと頭を下げ、彼の反応を伺う。

「……別に。お前は悪くない」

ルークは耳まで真っ赤にして、背中ごしに一言だけ呟くと去って行ってしまった。

(……照れてた)

廊下に一人残された私はそう確信した瞬間、顔が燃えそうなくらい熱くなるのを感じた。



fin.
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ