main story
□2.城で
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「……ルーク?」
恐る恐る、尋ねてみる。
「何でもねぇ、何でも!」
慌てた口調で言い放つとルークは書類をひっつかみ、勢いよく立ち上がって踵を返した。
ど、どういうこと?
ぽかんとする私を置いて、彼は足早に去っていく。
ぐんぐん進む足取りは、まるで止まる気配がない。
怒ってる!?
私は慌ててルークに駆け寄った。
「ルーク!ごめん──」
立ち去ろうとする彼の右腕に手を伸ばし、ぐいと引っ張る。
「………」
こちらを見たルークの顔は、さっきとは比べものにならないほどに真っ赤だった。
襟からのぞく首まで赤い。
ルークは無言のまま素早く口元を手で押さえ、私に背を向けた。
「私その、こういうの初めてで、どうしたらいいか分からなくて……ごめん」
私はおずおずと頭を下げ、彼の反応を伺う。
「……別に。お前は悪くない」
ルークは耳まで真っ赤にして、背中ごしに一言だけ呟くと去って行ってしまった。
(……照れてた)
廊下に一人残された私はそう確信した瞬間、顔が燃えそうなくらい熱くなるのを感じた。
fin.