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□3.城下町
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数日後。
「いいですか?いくら民に公表していないからと言っても、リオネ様は陛下のお客様なんですから、無茶な行動は慎んでくださいね」
険しい顔をしたユリアの忠告に私は首をすくめる。
「うん……分かってるよ。ただちょっと街の様子を見たいだけだから」
昼食後、私は街に出てみることにした。
本当は行儀作法を教えてもらう予定だったのだけど、ユリアの都合が悪くなったらしい。
護衛を用意すると言い張るユリアを私は押し止めた。
だって、ルークにはまだ会いづらいし……たまには一人で過ごしたい。
「お夕食までには帰って来て下さいね!」
──ユリアってお母さんみたい。
よく分からないけど、たぶんこんな感じじゃないかな。
ユリアの声を背中で聞きながら私はくすりと笑った。
3.城下町
「いらっしゃい!いらっしゃい!採れたて新鮮だよ!!」
「奥さん分かる?他の店のとは全然味が違うでしょう?うちの小麦粉は混ぜもの無しだからね……」
「そこのダンナ!こっちこっち!奥方への土産にひとつどうだい!?」
城から一歩出ると、そこは活気溢れる街だった。
石畳の通りには数多くの屋台や露店が立ち並び、沢山の人が行き交う中で商人達が声を張り上げて客寄せをしている。
様々な言葉が飛び交い、中には怒声も混じっているようだ。
「うわあ……すごい活気」
私はキョロキョロと辺りを見回しながら、通りを練り歩いていく。
「そこのお嬢ちゃん、首飾りでもどうだい!?」
「えっ、私?」
突然、屋台の奥から丸々と太ったおじさんが私に声をかけてきた。
店先をのぞくと、硝子や鉱石で出来たアクセサリーが所狭しと並べられている。
「うちのはそこらで売っているオモチャとは違うんだよ。腕のいい職人が厳選した素材を使って作ったものだからね……この月長石の指輪なんかどうだい?それから珊瑚のいい髪飾りが──」
おじさんは片っ端から商品を饒舌に勧めてくる。
「うーん……」
ふと目についたのは淡いさくら色をした石のペンダント。
この石、なんだろ。
何となく気になって、手に取った。
「それかい?モルガナイトだよ。なかなか綺麗な色だろう?石言葉は、ええと……何だったかな?買ってくれるってんなら安くしとくよ」
「……いくらですか?」
私が恐る恐る聞くと、おじさんは待ってましたと言わんばかりに顔を輝かせる。
「20アルス!……と言いたいところだが、負けに負けて18アルスでいいよ!」
財布を取り出そうとした所で私ははた、と気付いた。
──そういえば少しばかりお金を持って来たけれど、アスリトニア硬貨に両替していない。
なにせ、この国に着いてすぐルークに引っ張って来られたんだし……。
「あの、このお金って使えますか……?」
財布から取り出した一枚の硬貨を恐る恐る差し出すと、おじさんは一瞬ぽかんとした表情を浮かべ、私から受け取った硬貨を陽の下でまじまじと見つめた。
「こりゃあ亜鉛だね。お嬢ちゃん、アスリトニアへは来たばかりかい?」
「ええ。……使えませんか?」
私の問いに、店主は「うーん」と難しい表情を浮かべる。
「使えないことはないが……価値はずいぶん低いよ。この国には金鉱山があるから、金貨と銀貨、銅貨が主流なんだけどね……持ってないのかい?」
「はい、ごめんなさい……」
申し訳なさと恥ずかしさで真っ赤になる。
おじさんもちょっとがっかりしてるみたいだ。
「はは……しかし困ったなぁ。わしも生活がかかってるからね……」
「いいです!お金無いんだし、諦めます」
慌てて断ると、おじさんも申し訳なさそうに言った。
「そうかい?じゃあ今度、お金があるときに……」
「僕が買う」
突然割り込んできた声。
私と店のおじさんは同時に振り返る。
「王子!?」
薄汚れたケープを纏っているもの……そこに立っていたのは紛れもなくアルトア国王の息子、コルト王子だった。
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