main story

□6.不穏
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二人並んで『扉』に向かいながら、イベルトは声を落として囁いた。

「もう一つ報告がある。お前の異母兄であるシド・ミッドバレイだが……ボルトアに潜入成功したらしい。戦地に到着したのち、諜報活動を開始すると」

「お、おい……こんな往来でする話かよ」

あたふたと周囲を見渡すルークに構わず、イベルトは続けた。

「ボルトアの反乱軍が勝利すれば、この国を巻き込んで再び戦が始まる可能性もあるだろう。それを防げるか否か……お前の兄の働き次第という訳だ」

「やってくれるさ」
ルークは自信たっぷりに言う。

「兄の顔は一度も見たことないが……そう思うんだ」

「……ずいぶん楽観的だな」

呆れた様に首を振るイベルト。

「なぁイベルト、今夜あたり一杯やろうぜ。兄とその仲間の無事を祈って」

ルークが笑いかけると、イベルトは横目でじろりと睨んだ。

「また猫に変えてほしいか?」

「うっ、それだけは……」


***


私──リオネとコルト、そしてカームの三人はイベルトの部屋でルーク達の帰りを待っていた。
コウは城下町の仲間のところへ帰り、トワイライトは報告をする為に王さまの元へ戻っていったのだ。

この部屋は前に来たことがある。
古い手紙を見付けてイベルトを怒らせてしまった、あの部屋だ。

「イベルトってすごいなぁ……うわ、これ何だ!?」

興味津々で部屋を荒らすコルト。
止めなくて大丈夫かな……。

「リオネ」

不意に名を呼ばれ、私はカームを見た。

「どうしたの、カーム?」

彼は窓際の椅子に腰掛け、眼下に広がる海を眺めている。
その目は優しいけど……どこか悲しい。

「──僕のこと、話すよ」
「え?」

「リオネ、信じられないかもしれない……でも、聞いてほしい」


そしてカームは話し始める。

唇から紡ぎ出されたのは実に信じがたい、悲しい話だった。




fin.
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