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□5.原罪
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「……やはり貴様だったか」
イベルトはそう言ってフードを下ろした。
雨に濡れるかと思いきや……イベルトの周囲には全く雨粒が落ちてこない。
「濡れるの、きらい?気持ちいいのに」
カームが信じられないといった表情を浮かべると、イベルトは面倒臭そうに首を振った。
「それはお前だけだ。……コルトの友人というのはお前か」
「そう。コルトは先生」
会話にならない答えを返し、カームは人懐っこく笑う。
「……そうか」
指摘する気も起きず、イベルトはため息をついた。
「アルトア国王が近々お前に会いたいそうだ。そのうち迎えが来るだろうから、そのつもりでいろ」
「そこに行けば……コルトに会える?」
その言葉に、イベルトはカームを見た。
「あぁ。──だがあまり執着を持つなよ。泣きを見るのは貴様だろう」
「ありがとう。でも大丈夫」
カームは優しく微笑む。
「イベルト、あなたは優しい」
「阿呆が」
苦々しげに呟き、イベルトはカームに背を向けた。
「城に着いたら顔でも見せるんだな。いくつか薬を試してやる」
「……うん、ありがとう。またね、イベルト」
カームは小さく手を振って、イベルトが帰るのを見送った。
雨足が再び強まってきて、がらんとした広場にカームは一人立ち尽くす。
空を見上げて全身を濡らしながら、カームは切ない声で歌を口ずさんだ。
「我らのはたを時はゆく
時の輪よ
めぐりめぐれ
生命の再び生まれるまでに
時の風よ
吐息よ鼓動よ
走り 走れ
生命が役を終えるまでに
我らのはたを人はゆく…」
fin.
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