main story
□8.幕間劇
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「……おい、イベルト!」
イベルトの背後で、ルークが苛立った声を上げる。
「さっきから何やってんだ、早く入れよ!」
城下町の片隅、とある廃屋の前で二人は立ち往生していた。
やっとイベルトの部屋へ通じる扉まで辿り着いたものの……当の本人はドアノブを握りしめたきり動かない。
「いい加減にしろ!リオネ達が待ってるんだぞ!?」
何度目かになる催促をすると、イベルトはルークを振り返るなりきつく睨み付けた。
「誰が待っているだと?『あれ』を見て尚そんなことが言えるのか、貴様は」
「なんだよ、一体何が……」
少しだけ開かれた扉の隙間から、ルークは部屋の中を覗き込む。
「………」
目に飛び込んで来たのは、カームを抱き締めるリオネの姿だった。
8.幕間劇
「……リオネ」
カームが私の腕の中でのんびり声を上げる。
「なに?」
彼を抱き締めたまま声を返すと、カームは和やかな口調で呟いた。
「ちょっと、苦しい」
「ご、ごめん!」
私は慌てて体を離す。
さっきは思わず抱き締めてしまったけど……今頃になって恥ずかしくなってきた。
しかしカームは気にする風もなく、しわが寄ったフードのすそを直している。
──彼が慌てることって、あるのかしら。
ちょっと、見てみたいかも。
不意にがちゃりと扉が開く音がして、私は我に返った。
視線を巡らすと戸口にルークが、その肩越しにはイベルトの姿があった。
何故か二人とも不機嫌そうな顔で部屋に入ってくる。
「良かった、ルーク……無事だったんだ!おかえり!」
ほっと安堵して声をかけた……が。
「……ああ」
ルークはぞんざいに返事だけしてコルトの元へ歩み寄り、体調はどうかと尋ねる。
「………」
イベルトに至っては完全無視。
私の脇を通り過ぎ、壁際に置かれた棚を漁り始めた。
「お、おかえり?」
「………」
「………」
全く反応しない。
ど、どうしたんだろう。
何か……まずいことでもあったかな。
助け船を求めてカームを見ると、彼はにっこり笑い返してきた。
「リオネは柔らかいんだね」
「そ、そう?」
なんか……二人の背中から殺気が……。
もしかして──見られてた?
肌に突き刺さる様な空気の中、私は途方に暮れた。
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