main story

□10.序曲
1ページ/11ページ



10.序曲



泣いて泣いて……どれくらい経っただろう。
嗚咽がしゃっくりに変わり、やがてそれも収まるまで……私はひたすらコルトを抱き締め、頭を撫でていた。

「……落ち着いた?」

穏やかな口調で尋ね、そっと反応を窺う。
コルトは顔を伏せたままわずかに頷き、私を押しやる様にして体を離した。
泣きはらして真っ赤になった瞳がちらりと見えた。

「………」

だんまりを決め込む彼の手を取り、私は誰にともなく呟く。

「ちょっと休まなきゃ、ね」

このまま独り帰すのは、余りにも忍びなかった。



.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ