another story
□側にいるやさしさ
1ページ/4ページ
時雨さまから頂きました!
側にいるやさしさ
暖炉の日がゆらゆらと揺れ、暖かい風がふわりと体を包む。
外はもう白い妖精が舞い躍り、酷く寒い。
暖炉のお陰で暖かいにせよ、指先はかじかみ、暖かくなるわけではないのに、両手を揉みこんだ。
こんな寒い日には常夏の場所に行けばいいのかもしれないが、こうゆう寒さも嫌いではないと、イベルトはふと思った。
文字を追って書物の端までいくと、この部屋には存在することのない金が揺れた。
「なあ、イベルト」
陽気な声で名前を呼んでくるのは、金の髪の持ち主である人物、ルーク・ラグニウス。
この国の騎馬隊長である人物で、暇をもて余すことはないように思えていたのはつい先程まで。
どうやら自分の所まで来るとは余程暇らしい。
「イーベールートー」
返事をしないでいると、今度は駄々をこねる子供のように私の名前を呼ぶ。
気にしたら目の前にいる馬鹿の思う壺にはまる気がして、返事を返さないと決め、黙々と目の前の書物に視線を送っていた。
馬鹿は机に顎を乗せ、まるで上目遣いをしているように此方を見ているので、思わず鳥肌がたった。
書物に集中しようにも、視線が気になり目を向けると、小さく笑みを溢すラグニウスを見て、溜め息を吐く。
そういえばどうやってここに来たのだろうか。
自分の部屋に、他人が訪れぬ様にしたはずだが、また不具合が起きたのか。
部屋の扉には魔法の仕掛けがしてある。入れるわけもないのだが、きちんとラグニウスが居る。目の前にいるのだ。
.