main story

□1.登城
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私の大声に、周りに居た人々が驚いて一斉にこちらを振り返った。

「誰の世話になるかも聞いてねぇって……。アホか!」

騎士の言葉遣いががらりと変わり、今度は私が呆気にとられる。

「だって、団長は大丈夫だって……」

しどろもどろにそう言いながら、はっと気付く。

……あの人、わざと言わなかったんだ……。

「あああっ、ひどい!」

声にならない声を上げた私を見て、彼は盛大に吹き出した。

「何なんだ?びびったり怒ったり忙しいな」

「団長にだまされたんですよ、私!あの人、なんにも話してくれなくて……!」

鼻白んで言い返すと騎士はげらげらと笑った。
並んでいた隊商の人達が何事かと再びこちらを振り返り、みな訝しげな表情を浮かべて私達二人を眺めた。

「面白いぞ、あんた!俺はルーク・ラグニウスだ。よろしく、リオネ」

も、もう呼び捨て!?

図々しい言動の数々に目を丸くする私をよそに、彼は爽やかな笑顔で言葉を続ける。

「堅苦しいのは苦手なんでな。俺のことは名前で呼んでくれ」

「ルーク……これはさっきから思ってることのひとつなんだけどね。王さまの客にそんな言葉使いをしていいの?」

ムッとして思わず言い返すと、ルークは悪びれる様子も無く笑った。

「あっ、陛下のお客人だったな。…… まあ、特別待遇ってことにしておいてくれよ。うやうやしくしてほしいならそうするが」

「いや、違うけど……」

はっきり言って特別扱いは好きじゃない。あくまでただの平民であり曲芸団員である私が、急に騎士にかしずかれるなんて何だか居心地が悪い。
だけど、だけどさ……「特別待遇」って、そういう意味だったかな……?

腕を組んで「うーん」と悩む私に構わず、ルークは焦った声を上げた。

「まずい、お喋りしてる場合じゃなかった。陛下がお待ちだ!」

踵を返して歩き出す彼に、私は慌ててその後を追う。

「手続きは……?」

「もうやってある。遅れるわけにはいかん。急ぐぞ」

肩越しに言うとルークは奥の扉に通じる通路へ向かい、足早に窓口の前を通り抜ける。
並んでいる隊商の人達は列の横をルークが通ると、深々と頭を下げた。


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