main story

□2.城で
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部屋まで連れて行ってもらう道中に、ルークは少しだけれど城の中を案内してくれた。
大きな図書室や礼拝堂、兵士達が寝泊りする兵舎……などなど。
私は教えられるまま、片っ端から頭に叩き込んでいく。

……絶対、一人で出歩いたら迷子になる。

ルークの後を歩きながら、ため息をついて廊下の角を曲がったときだ。

べチャッという濡れた音と共に、彼の顔に何かが飛んできてぶつかった。

「え?なに!?」

何が起こったのかさっぱり分からず、私は声を上げる。

「やった!騎士団長のくせに鈍いなぁ!!」

まだ声変わりする前の少年の笑い声が聞こえ、私は硬直したルークの背中からひょっこり顔を出した。

見るとルークの顔には濡れた雑巾が張り付いていて、一人の小柄な男の子がそれを見てお腹を抱えて笑っている。

年は私よりずっと下みたいだ。
その顔は可愛らしく、丸く大きな瞳と長いまつげ。
一見するとまるで女の子みたい。

服や身に付けているものからして、位の高い家の子なんだろうけど……。

ひときしり笑ってから、男の子は私に気付いてきょとんとした。

「あれ、お前だれ」
「殿下!!」

突然ルークが大声を上げ、私とその男の子はビクッと縮みこむ。

「で、でんか?」

殿下って……つまり、王子さま!

「まったく……!一体今までに何度お叱りを受けたとお思いですか!?」

「うーん……何回?」

「二十一回です!!」

「まだまだいけるな」
けろりと呟く王子さまに、憔悴した様子で雑巾の貼り付いた額を覆うルーク。

「この件はお父上にご報告させて頂きま」
「ルーク、この者は?」

王子さまはルークの言葉を遮り、私を見る。

「へ?あぁ、客人のリオネです」

……どうやら王子さまの方が、ルークよりも一枚上手みたいだ。

「よ、よろしくお願いします……」

雑巾が張り付いたままのルークにつつかれて、私は軽く頭を下げる。

「ふーん……」

私の顔をじろじろ見て、やがて彼はにっこりと笑った。

「僕は第一王子のコルト・ノア・ウォルゼンだ。よろしくリオネ」

その天使の様な笑顔に、私は何のためらいもなく差し出された彼の手を握った。


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