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□5.原罪
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「ちちうえ、ちちうえ」

よちよち歩きの物心がついた頃には既に、コルトは毎日のように父の後を付いて回っていた。

「何だいコルト?あぁ、私の絵を描いてくれたんだね。とても上手だ……私にそっくりだよ」

アルトアはコルトに、いつも優しい微笑みを向けてくれる。
彼の舌っ足らずな話でさえ、いつでも、いつまでも耳を傾けてくれる。
……そんな父がコルトは大好きで、また大きな誇りでもあり、幼い胸の中で父の姿は輝いていた。

「ちちうえ、どうして僕にはおかあさんがいないの?ネーナには優しくてきれいなおかあさんがいるのだって」

ある日唐突にそんなことを尋ねてきた息子に対し、アルトアは少し笑った。

「お前の乳母がそう言ったのかい?……コルト、お前にもちゃんとお母さんは居るんだよ」

「ほんとう?どこに?」
コルトは身を乗り出す。

「……天上さ。遠すぎて目には見えないけれど、常に私たちを見守ってくれているんだよ」

そう言ってアルトアは優しく…そしてとても悲しげに微笑んだ。




「父上ー、どこに居るの?」
歳を八つ数えた頃だ。コルトはその日も父を探していた。
その手に、生まれて初めて作った木の小舟を握って。
素晴らしい出来だと乳母のネーナに褒められ、嬉しさのあまりアルトアに見せようと剣術の授業をさぼったのだ。

しかし、父は見つからなかった。
どこへ居るのかとあちこち歩き回り……勝手を知ったはずの城の中で、やがてコルトは迷子になる。


「……だから私は反対だったんですよ!敵国の女を妻にするなど……!」

薄暗い城の廊下に甲高い声が響き、泣き出しそうになっていた少年の耳にも、それは届いた。

この声は……おばあ様の声だ。


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