main story

□7.永遠のひと
2ページ/13ページ




「おじいちゃん、今度行くセニンシュラってどんな街?」

街道を歩きながら隣の老人を見上げると、彼は優しく笑った。

「そうだな……俺にとってもお前にとっても、懐かしい街だよ」

「懐かしいって、どれくらい?」

セニンシュラなんて初めて聞く街だ。
いつ行ったのか思い出せず、首を傾げる。

「……五十年は経ってるかな」

「五十年!?僕、まだ生まれてないよ!」

「………あぁ、そうだな」

彼は何も言い返さず、寂しげに微笑むと僕の頭を撫でた。


***


セニンシュラは実にありふれた、海沿いの小さな町だった。

夜になると祖父はいつもの様に宿屋や酒場をまわり、演奏をして日銭を稼ぐ。
僕はその隣で彼を見守り、また時には一緒に歌ったりもした。

「私は貴方のまなざしを歌う
貴方の微笑みを歌う
私は夜ごと貴方を夢にみる

貴方は私の悩みであり
憧れであり
幸福でもある

光あふれる貴方を
可憐な瞳と絹の髪をした貴方を
私は知っている」





昼間、祖父に連れられて辿り着いたのは小さな酒場だった。

「ちょっとお客さん、まだ開店前……」

迷惑そうな顔をして出てきた初老の店主は、祖父を見るなり顔色を変えた。

「あんた……!まさか、ヘルマンか!?」

「……久しぶりだな、ハプト」
祖父は微かに頷いて笑いかける。
ハプトと呼ばれた主は目元に涙を浮かべ、僕らを店の中へと招き入れた。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ