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□8.幕間劇
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***


「……煩い奴らだ」

リオネ達が出て行った扉を眺め、イベルトはぼやいた。

「でも、退屈しない」

後を引き継いでカームが呟く。

そうでしょう?と笑いかけてきた彼を睨み付け、イベルトは棚から取り出した小瓶を渡した。
中では得体の知れない液体が揺れている。

「飲め。以前より人魚の血を抑えられるはずだ」

「アリガトウ」
カームはにっこり笑って栓を抜くと、一気に飲み干した……が。
冷や汗がみるみる浮かび上がった。

「………おいしくない」

顔を歪ませ、苦しげに呻く。
「何入れたの……?」

「良い薬とは苦いものだ」
カームの訴えに耳を貸さず、イベルトはもっともらしい口ぶりで答えた。

「しかし、灰汁を除き忘れたかもな」

「……怒ってるの?」
無理やり笑みを作って尋ねるとイベルトは顔を背け、鼻で笑った。

「何がだ?リオネのことなら別に私は……」

「リオネ?違うよ、なんのこと?」
思わず首を傾げる。

「……それなら何だ、早く言え」

イベルトは深いため息をつき、先を促した。

「僕のこと、二人に話した。これ、マズイ?」

「何故私に聞く。私のことも喋ったのか?」

「あ……忘れてた」
また今度話しておくね、とのんきに笑うカーム。
イベルトは再びため息をついた。

「そのまま忘れてろ。あの時お前を助けたのは気まぐれだ」

「そう?」
カームはすべて見透かした様に微笑んだが、小さく頷いただけでそれ以上は何も言わなかった。

「それよりも……」
大げさな咳払いをして話をそらし、イベルトは鋭い視線を投げかける。

「貴様はこの国へ何しに来た。王子と知り合ったのはただの偶然か?」

するとカームはいつもの微笑みに陰を落とし、わずかにかぶりを振った。

「聞いたんだ。隣の国、ボルトアの内戦が激化してるって」

そして顔を上げ、にっこり笑う。

「この国にはイベルトがいる。イベルトは僕を助けてくれた。だから僕も、あなたを助けなきゃいけない」

「……要らんことを」

イベルトはカームに背を向け、口先だけの悪態をついた。



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