main story
□8.幕間劇
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「……煩い奴らだ」
リオネ達が出て行った扉を眺め、イベルトはぼやいた。
「でも、退屈しない」
後を引き継いでカームが呟く。
そうでしょう?と笑いかけてきた彼を睨み付け、イベルトは棚から取り出した小瓶を渡した。
中では得体の知れない液体が揺れている。
「飲め。以前より人魚の血を抑えられるはずだ」
「アリガトウ」
カームはにっこり笑って栓を抜くと、一気に飲み干した……が。
冷や汗がみるみる浮かび上がった。
「………おいしくない」
顔を歪ませ、苦しげに呻く。
「何入れたの……?」
「良い薬とは苦いものだ」
カームの訴えに耳を貸さず、イベルトはもっともらしい口ぶりで答えた。
「しかし、灰汁を除き忘れたかもな」
「……怒ってるの?」
無理やり笑みを作って尋ねるとイベルトは顔を背け、鼻で笑った。
「何がだ?リオネのことなら別に私は……」
「リオネ?違うよ、なんのこと?」
思わず首を傾げる。
「……それなら何だ、早く言え」
イベルトは深いため息をつき、先を促した。
「僕のこと、二人に話した。これ、マズイ?」
「何故私に聞く。私のことも喋ったのか?」
「あ……忘れてた」
また今度話しておくね、とのんきに笑うカーム。
イベルトは再びため息をついた。
「そのまま忘れてろ。あの時お前を助けたのは気まぐれだ」
「そう?」
カームはすべて見透かした様に微笑んだが、小さく頷いただけでそれ以上は何も言わなかった。
「それよりも……」
大げさな咳払いをして話をそらし、イベルトは鋭い視線を投げかける。
「貴様はこの国へ何しに来た。王子と知り合ったのはただの偶然か?」
するとカームはいつもの微笑みに陰を落とし、わずかにかぶりを振った。
「聞いたんだ。隣の国、ボルトアの内戦が激化してるって」
そして顔を上げ、にっこり笑う。
「この国にはイベルトがいる。イベルトは僕を助けてくれた。だから僕も、あなたを助けなきゃいけない」
「……要らんことを」
イベルトはカームに背を向け、口先だけの悪態をついた。
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