another story


□いつか、誰かが。(★★★)
4ページ/15ページ



なんでコイツが?

俺は呆けてその場に立ち尽くす。

「ど、どうした?珍しいな」

いつもなら嫌味のひとつふたつ返ってくる所だが、目の前のイベルトは何も答えない。
不機嫌な顔で俯いたまま戸口に突っ立っている。

「ま……とにかく入れば?」

頭を掻きながらぶっきらぼうに言うと、イベルトは大人しく従った。



何か無いかと戸棚を漁りながら、俺は内心ひどく動揺していた。

昼間、イベルトの悪口でも言ったっけかな……?

あまりあてに出来ない頭を回転させるが、思い当たる節は全くない。
だけどコイツが訪ねてくる理由なんて、復讐か何かしか考えられない。

冷や汗をかきつつ、俺は満面の笑みを浮かべて振り返る。

「な、なんか飲むか?ロットバルトに貰った酒が……あぁ、お前、飲めないんだったか」

「飲む」

窓際に立って外を眺めながら、イベルトはその一言だけ返した。

おいおい、本気かよ。

予想外の返答に驚いたが、俺は大人しく二つのグラスを手に取った。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ