螺雛おだい。

□1.「ヒナタ様」
1ページ/4ページ

まただ・・・。

また不機嫌になる。

ただ名前を読んだだけなのに。
一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが、眉間にシワを寄せて、こちらを睨むように顔を下げる。

何か悪いことをしたのかと思うが、それもほんの一瞬のこと。
すぐにいつもの軟らかい表情にもどる。

何をしたのかも分からない。ただ、名前を呼んだだけ。

以前はそんなことはなかった。
もちろん、自分が宗家と分家のことで悩み、怨んでいた時期は、
名前を呼ぶたびに、あなたは恐怖におびえた表情をしていた。
しかし、それは自分にも非があった。
名前を呼ぶのも嫌だと、相手を威嚇していたため。

しかし、その問題も晴れた後は、名前を読んでも徐々に表情を和らげてくれた。
もともとの性格もあり、恥ずかしそうに俯きながら返事をすることもあったが、
優しく微笑んでくれることもあった。

なぜ・・・?近頃のあの人の表情は不可解だ。

やっと二人の気持ちを分かち合い、共に生きることを誓ったのに・・・。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ