螺雛おだい。

□8.日向
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「この日が来た・・・」

庭一面にサクラの花が舞い出し、風と共にくるくると回っている。

太陽から降り注ぐ熱はとても軟らかく、花たちもそれに答えるように、色とりどりな色を虫たちに魅せる。

とても優しくて、大好きな季節が来た。


縁側に立ち、ジッと庭を眺める。
腰の辺りまで伸びた髪はゆっくりと風になびきながら、耳元でサワサワと音を立てる。
一つに結わなくても、広がることなく真っ直ぐと伸びた髪は、13歳の時から一度も切らずにおいたもの。
紺色に近い肌理細かい黒髪は日の光を浴びてキラキラと輝いていた。

「当主、六代目火影様がいらっしゃいました。」


静かに開かれた襖の前で使用人が頭を下げながら言う。

「こちらにお通ししてください。」

それに顔だけ向けると、優しい口調で伝えた。
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