螺雛おだい。
□1.「ヒナタ様」
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「ヒナタ様。何か俺に言いたいことがあるのでは?」
「えっ・・・」
久しぶりに二人の休暇が重なった日。
外はシトシトと雨が降り続け、湿気と暑さでとても外に出る気にはならなかった。
そういう日には、いつもネジの家へお菓子を持って訪れる。
もともと甘いものが大好物なためか、毎回違う種類で名の知れたお菓子をもってくる。
甘いものが得意でないネジのこともきちんと考え、1品だけは甘さを控えたものも。
そんな小さな心配りができるヒナタにいつも関心していた。
麦茶をいれたコップで氷がカランと音を鳴らす。
「えっと・・・、何のこと・・・?」
わからないといった表情で軽く首を傾げる。
蒸し暑いことも重なって、その表情に少しイラっときた。
意識したわけではないが、少し声のトーンが下がる。
「名前を呼ぶたびに不機嫌になって・・・。」
その言葉でヒナタの表情が変わる。
すこしビックリした表情になった直後に顔を真っ赤にさせて、俯いてしまった。
「・・・」
いつもの癖だ。意を突かれると、俯いて黙ってしまう。
この癖だけは、いつまでたっても治らないみたいだ。
だから、確信になってしまう。やっぱり、自分に非があったと。
「ヒナタ様、正直に言ってくれないとわからないですよ。
自分が悪いのなら、改めますので。」
言い聞かせるように、優しく伝える。
俯いたままのヒナタがゆっくりと顔をあげ、目を合わせた。
顔を真っ赤にしたままで。