螺雛おだい。
□8.日向
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使用人が去った後、玄関口の方から、こちらへドカドカと遠慮のない足跡が聞こえた。
(ふふ・・・、あなたらしい・・・)
その足音に昔から変わらないあの歩き方を想像し、笑みこぼれる。
使用人と共に来たその人は、襟を立てた真っ赤なマントを羽織り、その下には他の忍も着用するベストを着用していた。
13歳のときとは想像が出来ないほど身長は伸び、屋敷自体が古いせいもあるか、
襖の縁に頭が当たりそうになりながらも、こちらに手をあげ、昔のように笑ってくれた。
「よぉ。」
和室を横切り、ズカズカと縁側まで歩いてくる。
その姿に身体を向け、ゆっくりと頭を下げた。
「火影様、このたびは忙しい中お越しくださいまして、ありがとうございます。」
社交辞令ではない、本当に心から感謝の意を述べると、火影は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「そんな改まっていわれると恥ずかしいってばよ。今日はおまえが主役なんだぜ。
呼ばれた俺の方が礼をいわなくちゃいけないってばよ。」
木の葉隠れのトップに立ち数年たつというのに、この人は決してそれを鼻にかける様子もなく常に友達のように接してくれる。
それが時に心配になる時があるが、周囲もそれを受け入れているのだろう、常に良い部下がそろうにようになっていた。
忠実で誠意があるものばかりが。
それがとてもうらやましく思うのはなぜだろうかと心の奥底で感じながらも、それを一掃するようにやや強い風が二人の間を流れた。
一区切りつけるかのような風。
それを感じながら、さらに火影は言葉をつむぐ。今度は少し寂しそうに。
「まさか、おまえが日向家の当主になるとは思わなかったってばよ・・・」