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□【3】
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裕はようやく教室にもどり自分の出席番号の席さがしあてて腰掛けた。
他のクラスメイト達は席に座って携帯をいじっていたり初対面の相手と自己紹介したり、ざわざわと賑わっていた。
裕はそんな中、先程の出来事の余韻にまだ浸っていた。
鋭い突き刺さる、冷たいような…燃えるような瞳。
猛獣に狙われた草食動物のような危機感、そして何とも言い難い威圧感。
裕はぶるっ、と身震いしたと、そんな彼に近づいてきた人物、先程声をかけてきた渡倉健太だ。

渡倉はにこにこと笑みをうかべてうなだれている裕に話し掛けた。

「よぅっ! さっきはどーも。オレ渡倉ってんだ、よろしくな」

にーっと歯をみせて微笑みながら肩に手をおかれて裕は、はっ、とふりかえって嬉しそうに笑みを返した
「あっ!さっきはなんかごめんな〜、オレ、西川裕!よろしくなっ」

かたんっ、と立ち上がって握手を求めるように手をさしだす。
これでもか!といわんばかりの満面の笑みの裕に渡倉はぽりぽりと頬をかいてへへ、と手を差し出し握手をかわす。

「お前入学式に遅刻とはいきなりぶっとんだなー!先生に目ぇつけられんじゃねーのぉ?」

にゃりと悪戯っぽい笑みで言う渡倉に苦笑して

「そーなんだよぉ!ちょーついてなくねぇ?」と声をあげる。なんだかぽかぽかと明るい、暖かいような雰囲気の裕に渡倉はおもわず頬が緩んだ。
昔から裕のまわりには人が集まる。
何故だかはわからないが裕のふりまく明るい笑顔と、明るく春の日差しを浴びているようなふわふわしたオーラに人々はひきよせられるのだ。
さらに裕の素直で明るい、活発な性格も手伝っていつも人の輪の中心にいたのだ。
もちろん、本人にはまったく自覚はないのだか。

そしてそんな裕はさっそく新しいクラスに輪を作っていた。
皆、裕の笑顔にほんわかとした和やかムードで自己紹介をし裕の遅刻の理由を問うたり中学の話で盛り上がっていた。
と、教室の扉ががらり、とあいてスーツ姿の担任がポケットに手を突っ込んで少し猫背気味で入ってくるとやる気ない声で「おーら、座れてめーら」とだるそうにはなつ。
24、5歳くらいの若い先生だがだるそーに後頭部をがしがしとかいて黒板にもたれかかっている。皆が座りおわるのをみてから「あー…」とやる気ない声から話はじめた。
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