PERSONA3・長編
□呼び寄せられた蝶のようにA
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SIDE.HARUTO
結局。
あれからさほど眠れたわけでもなく、殆どを寝ずに過ごした春兎。
「……ぅ、あー…」
HR終了を告げるチャイムと同時に伸びをして、下校し始める生徒をボンヤリと眺める。
寝不足からか1日中を寝て過ごしてしまった気がするが…。おかげで気分はすっきりしていた。
少し晴れない部分はあるのだが…。
皆からの視線は相変わらず。
そして、明彦の印象も変わることは無く…。
春兎は鞄を手にとって、音楽プレイヤーを起動し教室を後にした。
校門をくぐり、下校する人にまぎれて寮へと足を進める。
以前住んでいた時とは違うが、町並みはあまり変わっていなかった。その町並みを眺めながら歩いていると、ふと、橋が目に入る。
「…………」
思い出す、断片的で靄の掛かったような記憶。
夜に、立ちすくむ自分と……
……―――自分と?
「……帰ろ…」
何を考えているのだろうと、思考を振り払う。曖昧な記憶で…あまりに不鮮明で、思い出したくても思い出すことが出来ない記憶。
足を速めて、寮への道を急ぐ。
晴天だった空は翳り始め、不穏な空気が流れ始めていた。
「………夕飯どうしようかな〜…」
ファーストフード店を見ながら、ふとそんな事を考える。寮で作る事も出来るが…材料があるだろうか?
「まず、帰ろ…」
真っ直ぐに帰る予定が、何かしらの必需品を購入して回って帰ったため、辺りが暗くなる頃に寮に着いた。
行く店の店員に、無駄に話しかけられてしまったのも、遅くなった原因だと思う。
寮の玄関の扉に手を掛けて、ゆっくりと引く。
光が漏れると同時に、中の様子が伺える。ゆかりと、見た事のない人物がソファーに腰掛けていた。
「――…ですけど……あ、帰ってきました。」
扉を開けると同時に、