PERSONA3・長編

□死神 ‐Grim Reaper‐T
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ざわざわと人の声や物がぶつかる音が反響する中で、どこかそれを遠くに聞きながら黙々と箸を進める。


ここは、国立大学。
結構な広さを誇る、国内でも有名な学校だ。

俺はそんな学校に通う、一端の大学生。
アルバイトと学業を両立する、何処にでもいそうな人間。


世間の家と比べたら、家族が居ない、という悲観とも取れる状況下で生活しているとも言える。

が、その辺りは心優しい人に助けていただいているため、心配はあまり無い。





「先輩、また牛丼っすか〜?」


間の抜けた明るい声で、前に座る人影が見えた。

「何を食おうが俺の勝手だ。」

箸を止めて顔を上げれば、帽子がトレードマークの後輩が正面に座っていた。

同じサークルに所属している、伊織順平。

「身体壊しますよ?桐条先輩も心配してましたし。」

「…美鶴か……」


桐条美鶴。
何処へ行っても名前が関係してくるだろう巨大グループの社長令嬢。
俺の幼馴染でもあり、援助をしてくれている家の人でもある。
そして、同じサークルの部長兼生徒会長。


「まあ、俺も似た様なもんっすから、あんまし言えないんですけどね。」

頂きます。と手を合わせて料理に手を付けう順平。

確かに順平はいつも肉料理ばっかり食ってるな。


「今日、集まりありますよね?先輩来ます?」

「バイトだ。」

苦笑しながら言えば、順平は楽しそうに言う。

「残念だな〜。女子4人に囲まれて過ごすのかぁー」

「顔がにやけているぞ。」

何が残念なんだか。


美鶴の他に女子は3人。
いずれも美鶴と俺の後輩で、山岸風花、岳羽ゆかり、アイギスがいる。
アイギスは留学生だ。名前から察せるだろうがな。


「嬉しいなんて言ってないっす!!」

「嬉しそうなんて言ってないぞ。にやけてる。と言ったんだ。」

墓穴を掘った順平は、恥ずかしさを隠すようにご飯をかき込んだ。


「けど、皆先輩のこと心配してましたよ。」




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