PERSONA3・短編

□お預けの理由
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今現在、とある寮の一角では、2人の男が睨みあいを続けていた。

「………」

「………」

何を話す訳でもなく、明彦と春兎は顔をつき合わせて固まっている。

「…何でだ?」

「…何でもです」

「………ちょっとでも駄目なのか?」

「ちょっとでも駄目です。」

多少の言い合いが発生した後、再び沈黙が降りた。





何故こんな状態になったのか……
それは、すこし前の2人の会話まで遡る。




夜。
2階の端の部屋の前に、1人の人物が立っていた。

「入るぞ」

明彦はいつもの様に、ノックもなしに春兎の自室を訪ねてきた。

「こんばんわ。明彦先輩。」

春兎もいつもの様に、当たり前と言った様子で明彦を出迎える。

恋人同士の彼らは様々な理由で、週に4・5回の頻度で部屋を行き来する。
………あえて理由は書かない事にするが……。

とにかく。
今日は明彦が春兎の部屋を訪ねてきた。

「テレビを見てたのか?」

「えぇ。面白いの、やって無いんですけどね。」

扉を閉めて、ベッドに腰掛けて居る春兎に訪ねると、春兎は苦笑してテレビを消してしまった。

「ちょうど暇してたところです。」

リモコンを脇に置いて微笑む春兎。
明彦はその春兎の隣に腰掛けた。

「俺も暇になってな。様子を見に来たんだが……」

隣のサラサラの髪を撫でると、春兎は嬉しそうに笑った。

「お風呂も入っちゃったし、勉強もやっちゃったし……やる事無いは無いで、実際は暇ですね。」

今日は疲労やら風邪引きやらが多く、タルタロスも休みにしてしまった。
外出する……と言っても、大降りの雨が降っているし、風も強い。
しかも夜のため、出掛けるにも範囲が限られてくる。

「まぁ。暇になるのもいいな。お前と居る時間が長くなるってことだ。」

「うん…そうですね。」

微笑む様に笑い合った後、ふと、2人の目が間近で絡み合った。

「……」

自然と、明彦の顔が、春兎の顔に引き寄せられるように近づいて行く。
体重を移動させた事によって、ギシリとベッドが音を立てた。

そして、あと少しで唇と唇が触れそうになったその時―…

「先輩!ストップ!!」

ぺちっと、小気味良い音を立てて明彦の顔が、春兎の手によって遮られた。

「………は…?」

春兎の両手が、明彦の頬に添えられて居る。

「すみません。えーと……駄目です。」

手を離して、気まずそうに話す春兎。
明彦は理解出来ない。と言った様子で動きを止めた。




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