PERSONA3・短編

□甘い時間
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ある駅前の階段。
傾き始めた太陽から日差しを浴びながら、真田明彦は時計を気にしながら駅に目を向けていた。

「……遅くないか?」

現時刻は5:23。
待ち合わせの時刻は5:00。

明彦の部活も今日は無く、恋人のアイツも奇跡的に予定が空いていた(アイツはいつも忙しそうだから。)

久しぶりにデートをしようと誘うと、アイツは嬉しそうに笑ってくれた。


………のだが…



「遅い」

一つ年下の後輩であり、恋人である聖春兎が来ない。
ドタキャンか…?
とも思い始めていたとき、駅のエスカレーターを駆け下りる音が耳に入った。

段々と大きくなる足音。

転びそうになりながらも、彼が姿を現した。

「ご、ごめ…ごめんなさっ…!!」

いったい何処から走ってきたのやら……
秋だと言うのにブレザーを脱いで手に持っていた。
額には汗が滲んでいて、髪が少し張り付いている。

よほど熱いのか、第二ボタンまで開襟していた。
………よく襲われずに来れたな………と思った。


「あの…生徒…か、いに……っは…捕まって…!!」

息が上がりきっているのにも関らず、彼は必死に言葉を紡ぐ。

「わかった。怒ってはないから、とりあず落ち着け。」

頭をぽんぽんと軽く撫でると、彼は喋るのを一回ストップさせて息を整えた。

「すみません…教室出たら、美鶴先輩と小田切に捕まっちゃって…何とか抜けてきて………ごめんなさい。待ちましたよね…?」

「さほど待ってはない。それより、美鶴から脱出してきた事は賞賛に値する事だ。」

からかう様に笑って見せると、彼は表情を和らげてへにゃりと笑う。

………押し倒してしまいたいと思う俺は、末期かもしれない。



「じゃあ、行きましょう。どこか、行きたいとことかあります?」

春兎はボタンをいつも通りに閉めて、ブレザーを羽織った。

「熱くないのか?」
と聞くと、
「もう引きました」
と言う。




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