PERSONA3・短編
□こんなに しずかな 夜は はじめて
1ページ/5ページ
ぼんやりと、寮の天井を見上げる。
現在時刻は金曜日のPM 10:43。
ソファーでくつろぐ自分の足に顔を乗せて、身体を伸ばすコロマルの頭を撫でながら視線を巡らせた。
「寮って、こんなに静かだったんだね、コロマル………」
「わんっ」
尻尾をパタパタと振りながら、コロマルは悲しげに鳴く。
「う〜ん……これはこれで暇だなぁ…」
なぜこんなにも寮の中が静かなのか。
話は、2時間程前までさかのぼる。
『済まない。今日は学校に泊り込みで合宿がある。』
明彦は自室から降りてきて早々に、大きなバッグを手に持って言う。
『明彦もか……私も本家に帰る用事があってな。今日は本家に泊まり込みだ。』
パタリと本を閉じて、美鶴は言った。
『あ、アタシも今日は外泊します。友達の家に泊まりに行って来るんで。』
『私も居ません…家に帰らないといけないので……』
『オレッチも家に今日は帰りまーす!』
『僕は寮の友達に泊まりに来ないかって誘われてて…』
皆が口々に言う。
コロマルの相手をしていたアイギスも、ピシッと手を挙げて言う。
『私も、今日はラボに戻るのでありますよね?美鶴さん。』
『そうだ…………となると……』
全員が春兎に目を向ける。
『今日はお前1人だな…………大丈夫か?』
明彦が心配そうな顔をして尋ねて来た。
春兎は、その事か!と言わんばかりに『あぁ…』と声を漏らす。
『大丈夫です。留守番してますから、皆さん気をつけて行ってらっしゃい。』
にっこりと笑って、一番初めに明彦を送り出した。
明彦は去り際に
『鍵はちゃんと掛けろ』
『誰も寮に入れるな』
『携帯は肌身離さず持っておけ』
と、お母さんみたいな事を言って去って行った。
その後にゆかりと風花が。
その次に順平と天田が。
そして最後に、アイギスと美鶴が。
『それでは、行ってくるであります!!』
『留守番任せたぞ。気をつけてな。』
黒塗りの車に乗って、2人も去って行った。
そして、初めに戻る。
.