PERSONA3・短編

□磁石
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―――…先輩は、いつもこうだ。

「ありがとうございました〜。」

薬屋の定員の声を聞きながら、春兎は横に並ぶ明彦を横目で見た。

いつもいつも、どこに行くにも必ず、と言っていいほどついて来るし。
何かあれば、過保護なほど心配するし。


「……どうした?春兎?」

自分の事で悩まれているとも知らない明彦は、顔を覗き込むようにして、春兎に問いかけた。

「……何でもないです。」

心配してくれる事は、嬉しい。
と同時に、どれだけ自分の事を信じてくれていないのだろうか…?
と思う。

どこに行くにも一緒。
何かあれば聞いてくる。
という事は、自分が明彦以外の事を見るとでも思っているのだろうか?

「そんな深刻な顔をして、何でもないは無いだろう?」

苦笑して言う明彦。

「何でもないですよ、本当に…………あ…雨?」

突然、ぽつぽと雨が降ってきた。
気付いて顔をあげると、灰色の重い雲から、小さい雨が落ちてきた。

「…そうだな……」

明彦は傘を開くと、春兎の手から荷物を取った。

「…先輩……あの、傘、もう1本持ってきてなかったんですか?」

段々と強くなる雨の中、春兎は明彦に聞く。

「2人で入れば問題ないだろう?」

「………」

つまりは、あれです。
よく雨の日に見受けられる

相合傘?

あれをしようと言う訳でしょうか?

「行くぞ。」

心の中の春兎の疑問を感じ取ってくれるわけも無く、歩き出してしまった明彦。
濡れるのも嫌なので腹を括って、傘に入った。

「………だろう?」

「え?」

明彦が何か言ったのだが、強くなってきた雨のせいで良く聞き取れなかった。

「こうやって歩けば、お前が俺の物だと分からせる事が出来るだろ?」

「………え…?」

何を言ってるんだ。と、少し思考が停止する。
が、言ってる意味が分かり、春兎の顔が一気に赤くなった。

「………ばか…」

真っ赤になって言うと、明彦はクスクスと笑った。




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