副書廊緑

□淡い恋心からの卒業
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この季節、別れというのは否応なしにやってくるものだ。



この二年間、想いを伝えられなかった彼とも、今日でさよなら。



だからせめて、自分の気持ちだけでも知ってほしかった。




卒業式のあと、人気のない裏庭に山本を呼び出した。


これだけベタなシチュエーションなら、鈍い彼だってその意図を察するだろう。
・・・多分。


並中の裏庭には、立派な桜の木が人知れず植わっている。


告白するならこの木の下でと決めていた。


別に此処で告白すると成功するとかジンクスがあるわけではないが、いつか彼と見た桜が泣きたくなるほど綺麗だったと思ったから。



足音が聞こえてそちらを見ると、彼が一人、ぽつんと立っていた。


とりあえず友達を連れてこなかったことに安堵する。

彼なら悪意なしでもやりかねない。




「何だよ、わざわざ呼び出して。」


今日も爽やかな笑顔が眩しいぜ山本武。

いや、そんなこと思ってる場合ではなくて。






私は意を決して言葉を発した。




「あたしさ、好きだったんだよね、山本のこと。」





そう言えば、山本は大層驚いた顔をした。

やっぱり気付いていなかったという事実に、少しだけ落胆する。



そして、少しの沈黙が流れたあと、山本は申し訳なさそうに口を開いた。







「あの・・・さ、俺、別にお前のこと好きだけど、やっぱそういう風には、見れねぇわ。ごめん、な。」









ほらね。



貴方は優しいから、



好きじゃないとか嫌いとか言わないね。




もしかしたら私はそんな優しさに甘えたかっただけなのかもしれない。





でも、もうさよなら。






「いいの、気持ち、伝えたかっただけだからさ。」





優しい貴方に気持ちを押しつけるのは少し気が引けるけど、



最後くらい、私のことで困らせてもみたかったし。












桜の花びらが宙を舞う。








だから、


バイバイ。













(某日、桜の木の下で)









20080314

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