NOVEL

□卒業アルバム
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今日は高校の卒業式だった。

友達と泣きじゃくる人、
写真を撮る人。

たくさんいるけれど、
私はどれにも属していない。

ただ、屋上に居る。
かがみと二人で。

「どしたの?かがみん」

私はいつものように軽い口調で、
自分を呼び出した同学年の少女に
問いかける。

でも彼女は、普段は嫌がる
呼称にも反応せずに口を開いた。

「あの、さ…」

かがみは不安げな声を出した。

「もう卒業なんだよね…」
「早いねー。帰ったら
 ギャルゲー堂々とやんないと」

でも、かがみはいつもの
返答をしなかった。

「あたし…こなたのこと、
 好きだからねっ……!」

「…え……?」

突然、何を言い出すんだろう。
戸惑っていると、
彼女は質問をよこした。

「こなたは…?」

私は―?
私は、どうなんだろう。

かがみのことは、嫌いじゃない。
むしろ好き。

でも、その好きと、
かがみの好きは違う。

何だろう。

「私―、よく、分からない」

俯く。
こんなに悲しくなったの、
久しぶりだ。

「今は、答えられない…」

言い終え、顔をあげる。

かがみは、うっすらと
瞳に涙を溜めていた。
それでも、
いつもの強気な笑顔を向ける。

「そっか。
 変なこと言ってごめん」

かがみは背を向けた。

「また、どっかで会いましょ」

そう言って、
走って屋上から出て行った。

―また、どっかで会いましょ

かがみの言葉が、
深く胸に突き刺さった。

悲しい。痛い。苦しい。

寂しい―


気付けば
私は涙を流していて、

他の人がそうするように、
泣きじゃくっていた。

「かがみ、ごめんね」

私は嘘をついていた。
よく分からないなんて、嘘だ。
答えられないなんて、嘘だ。

だって、
今私はこんなにも寂しい。

それは、
かがみが好きだからなのに―

「あ、こなちゃーん!」

涙を拭い、声のした方を向く。
つかさが手を振っていた。
走って近づいてくる。

「これ卒業アルバムなんだけど、
 先生が何でも書き込んで
 良いって」

つかさがアルバムを差し出す。
適当にページをめくっていく。

「あ………」

そこには、
かがみの言葉があった。

「あ、お姉ちゃんも書いてる!
 …こなちゃん、仲良いね!」

つかさはかがみの書き込みを
読み、こう言った。
それは、勘違いだ。

『また、
 皆と一緒に帰りたいです。
 こなたが好きでした。 
         柊かがみ』

これは、友情なんかじゃない。
ちゃんとした、告白の言葉。

「書いて、いい?」
「ああ、これ使ってね」

ペンを受け取り、
文章を綴っていく。

「…はい、ありがと」

ペンを返し、走る。
向かうのは、かがみの元へ。
『好きでした』で終わらせない。

始めるんだ。

「かがみ!」

ツインテールの少女を呼ぶ。

「こな……た?」

言うのは、卒業アルバムの言葉。
一字一句違わない、言葉。



『かがみのことが大好きです。
          泉こなた』



end
 

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