NOVEL

□温暖バレンタイン
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「寒いわねー…。地球温暖化はどうしたのよ……」
そんなことを呟きながら、いつものように北高ハイキングコースを歩く。
今日は2月14日。言い換えれば、バレンタインデー。
心なしか、周りを歩く人々がざわめいている気がする。綺麗にラッピングされた箱を持っている女子も居る。
当然、SOS団団長のこのあたしがその行事を見逃す訳も無く。
あたしの手には紙袋が握られていた。
入っているのは四つのチョコ。
キョンに古泉君、映画の撮影に協力してもらった谷口と国木田の分が入っている。
もちろん、全部義理だけど。
いつ渡そうかと考えていれば、数メートル前に見馴れた長身があった。
「あ、古泉君!」
「おや、涼宮さん。おはようございます」
「おはよー」
見間違えるはずも無い、SOS団副団長古泉君だった。
丁度良かったわ、と紙袋をごそごそと漁る。
「はいこれ、チョコレート。ちゃんと手作りだからね」
「ありがとうございます」
古泉君はいつもの笑みを絶やさずに恭しくそれを受け取った。
こんな風に受け取ってもらえれば、作った甲斐があるってものよ。
と、そこへ小さな声が聞こえた。
「あの、古泉くん…」
そちらを向けば、綺麗な包装紙に包んである箱を持った少女が居た。
同級生くらいかしら。大人しそうな子ね。
そこまで考えて、あたしは気付く。
――邪魔よね、あたし。
少女は顔を赤くして立っている。
告白しづらいわよね。ごめんごめん。
心の中で謝って、古泉君に声をかける。
「じゃあね、古泉君」
「はい、それでは」
古泉君、一体いくつチョコを貰うのかしら。
そんなことを予想しながら、あたしは坂道を歩いていった。
あと、三人。
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